次に見るのはどんな夢? ウイルス感染が広がるこの時期に鮮明な夢を見る理由

Fer Gregory / Shutterstock.com

著:Rosie Gibsonマーセー大学、Research Officer, Sleep/Wake Research Centre, College of Health) 

 新型コロナウイルスの感染が拡大している現在、鮮明な夢を見る人が多くなるという、興味深い現象が起きている。

 ブログ記事やソーシャルメディアには、こうした経験談が数多く寄せられている。

 最近見る夢は複雑で悩ましいものであったりするものの、夢を見ること自体は正常なことであり、多くの人にとって異常ともいえる現在の状況を処理するのに役立つと考えられている。

◆眠っている間に
 大人について言えば、健康を維持するためには7~9時間の睡眠が必要とされている。

 私たちが眠っている間、一晩のうちに異なる睡眠の段階を経験している。これには、浅い眠りと深い眠りのほか、睡眠の後半によくみられるレム睡眠という状態がある。レム睡眠の時には、文字通り眼球が素早く動いている(REM: Rapid Eye Movement)。

 どの段階であっても夢を見るものだが、感情的で鮮明なを見るのはレム睡眠の時だと考えられている。

 一晩に何回かレム睡眠の状態が訪れるのが一般的ではあるものの、夢を見たことやその内容を必ずしも覚えているわけではない。複数の研究によって、私たちの気分や行動、認知機能を制御する機能をレム睡眠が有していることが明らかになっている。

 夢は心の健康を保つ上での防御メカニズムのような働きをするという見方がある。恐怖への対処や、ストレスの多い実生活の予行演習をするという疑似的な機会を提供するというのだ。

 世界的なウイルスの感染拡大とそれに関連する制約により、睡眠の方法や時間にも影響を及ぼしている可能性がある。人によって、良い影響と悪い影響があるだろう。いずれにしても、見た夢を思い出す機会が増えるとみられる。

◆睡眠障害と夢
 ウイルス感染が拡大している昨今、中国イギリスで行われた研究によると、多くの人々は心配することが多くなったほか、十分な睡眠がとれなかったり、途中で起きてしまったりするようになったという。

 就寝時、自発的に、もしくはメディアを通してウイルスのことをあれこれ考えていると、リラックスして眠りにつこうという欲求に反してしまう。それが夢のネタを提供することになる。

 うまく睡眠がとれないとレム睡眠への圧力が高まるので、次の段階でレム睡眠の反跳とよばれる状態が起きる。この間は、いつもより夢が鮮明かつ感情的になるとされる。

◆十分な睡眠時間を
 別の研究によると、ウイルスの感染が拡大するこの時期、睡眠時間は長くなり、活動時間が短くなっている。

 柔軟性のあるスケジュールで在宅勤務や自宅学習をしている人であれば、通勤・通学ラッシュを避けることができるほか、朝早く起きる必要もないだろう。睡眠時間が長くなり、レム睡眠の状態から自然に起床すると、見た夢を思い出すことが多くなる。

 同居人がいれば、あなた専属の聞き手になってもらい、起床時に昨晩見た夢について話すこともあるだろう。そうした話し合いをすれば、夢に関する記憶も深まるものだ。その後で見る夢についても、さらに記憶できるようになるだろう。

 この時期に見た夢を思い出し、関心を持つことが多くなったのは、このような事情も関係しているとみ られる。

◆パンデミックに対する不安
 日中の状況への精神面での対処に夢が役立つことがある。また、夢は単に現実や心配事を映し出していることもある。

 注意しなくてはならないことが多くなり、社会規範が変化しつつあるこの時期、私たちの脳は、眠りにつき夢をみている間も処理しなくてはならないことをたくさん抱えている。ウイルス流行や仕事、家族のことで心配したり、緊張したりすると、ストレスの多い夢を見るようになるだろう。

 そのため、恐怖、戸惑い、社会的なタブー、仕事のストレス、悲しみや別れ、会えない家族に関する夢のほか、ウイルス感染や病気に関するリアルな夢を見たという報告記録されている。

 異常なくらい鮮明な夢や悪夢を見たという人が増えたとしても、特に驚くことではない。同様の報告は、2001年にアメリカで起きた同時多発テロ事件のほか、自然災害や戦争の直後といった、急激な変化、心配事、トラウマが関係する時期にもみられた。

 不安障害の患者やトラウマを実地で経験したことのある人の場合、見る夢が変わる傾向がみられる。だが、9.11同時多発テロのような事件をメディアなどで間接的に目にした人についても、同様の変化があったことが報告されている。

◆夢の中で解決される問題
 夢に関する理論には、その日の精神的な欲求の処理、経験の記憶保持、問題の解決、適応、学習に夢が一定の役割を果たしているというものがある。

 この作用は、レム睡眠の状態にあるときに脳の特定部位が再活性化し、神経連絡が結合されることにより実現される。

 このとき、感情、記憶、行動、視覚をつかさどる脳の部位が再活性化している(これに対し、論理的思考、理由付けや動作に必要な脳の部位は休息状態となっている)。

 夢を見ている間になされるこうした活動と結合の引き金となるのは、その人の起床時の行動、体調、ストレス要因だと考えられている。

 このような神経活動がなされるのは、学習と記憶を合成するためである。現実に見る夢は、この神経活動の副産物のようなもので、脳の働きが起床時の行動に追いつき、理由付けをしようとしている間、私たちは論理的な説明を組み立てているのである。

◆どうか、眠りについてください
 睡眠が妨げられて夢に問題があったり、それがストレスになったりする場合には、ウイルスの感染拡大で自身の睡眠スケジュールや行動に変化がなかったかを振り返ってほしい。この期間は、睡眠や健康維持に役立つ助言を求めてもよいかもしれない。

 私は同僚と協力し、睡眠起床研究センターにおいて、ウイルス感染症が流行しているこの時期の睡眠に関する情報シートを制作した。

 ニュージーランドに住む人を対象に、睡眠に関する調査も行っている。ここではウイルス流行時の睡眠に影響を与える要因を研究しているほか、調査参加者は自分が見た夢についてコメントすることもできる。

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by Conyac

Text by The Conversation

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