ご当地麺「熱乾麺」も復活 コロナ禍から立ち直りつつある武漢

AP Photo / Olivia Zhang

 シカゴにはディープディッシュ・ピザ、ローマにはスパゲッティがあるように、中国の武漢にはゴマソースをたっぷりまぶしたご当地麺、「熱乾麺」がある。地元で店を営む周国瓊氏はいまも店内飲食の許可を与えられていないが、テイクアウトで注文しようと愛好家たちが店外まで行列をなしている。数ヶ月にわたる都市封鎖がようやく解除され、お馴染みの料理に対するニーズは並大抵ではないことが明らかになった。

 新型コロナウイルスの感染者は劇的に減少しているとはいえ、武漢を含む中国全土の問題解決に向けた道のりはまだ先の話だと政府関係者は強調している。だが武漢の人たちが朝食で食べるお気に入り麺が再び提供されるようになったのは、昨年12月に初の感染者が報告され、世界的な感染拡大の中心地とされたこの都市が徐々に正常化しつつあることを示す明るいニュースである。

 店舗再開から5日経ったいま、周夫妻は一日あたり数百杯もの熱乾麺を毎日提供している。ウイルス感染前の頃には及ばないが、十分忙しくなる注文量である。周氏は「仕事があるのは嬉しい限り」と話す。

 武漢でコロナウイルスの感染により死亡した人の数は2,548人、感染者数は5万人超。1月23日に事実上、都市が封鎖された。

 国家衛生健康委員会の馬暁偉主任は3月31日、国内感染の「最も危険で深刻な段階は過ぎ去ったようだ」とコメントしているが、旅行者の厳格な隔離や休校の措置などは徐々に、かつ慎重を期して実施されるべきだとした。

 外務省の華春瑩報道官は定例会見で、「国内での感染は現時点ではまだ収まっていない」と述べている。

 中国によると、コロナウイルス感染者の大半は外国からの旅行者である。武漢ではこの1週間、新たな感染者のほか、感染の疑いのある者も確認されていない。政府関係者は、厳格な移動制限や社会的距離に関する規制を緩和するには、感染者ゼロが14日以上継続しなくてはならないと話す。

 地元で小さな精肉店を営み、将来の希望が見え始めたという簫氏にとって、規制の緩和はまだ先の話かもしれない。食料の在庫はせいぜい10日ほどで、売り上げの急回復が欠かせない。 氏名を明らかにすることを拒んだ同氏は、「今後数ヶ月にわたり、半頭分の牛肉が毎日売れるだろう」と言う。

 どちらに転ぶかわからないことがまだたくさんある。同氏の3人のビジネスパートナーは戻ってきてくれるのか? ほかに仕事のスキルがないのに、売り上げが伸びなかったらどうするのか?

 武漢市武昌区にある胭脂通り沿いには肉や麺など必需品を扱う元気な店が並び、店員が大きな声を張り上げて呼び込みをしている。

 食品市場の外では、高齢者が大半の集団が長い行列をなしている。互いに距離を保ち、言われた通りマスクを着けている。なかには、ゴム手袋をはめている人、帽子をかぶっている人もいる。

 市場の営業時間は午前9時から午後5時までとなっており、一度に入店できるのは30人まで、滞在時間は20分に限られている。行列に並ぶ客の一人に元公務員の簫玉峡氏(70)がいた。一人で暮らしており、魚を食べるのは2ヶ月ぶりだという。

 中国では多くの人がスマホを使って必需品を注文しているが、75歳の元会社員である王海淘氏にとって、スマホの操作は難しすぎるという。王夫妻によると、地区のボランティアが提供してくれる品物の選択肢は少なくなっている。

 肉だけでなく新鮮な野菜の供給も十分増えてはいるようだが、その種類は限られている。胭脂通りなど高齢住民が多い低層住宅にボランティアが届けるフードボックスに積み込まれているのは、おもにニンジンやキャベツである。

 住宅地近くに設けられた野菜の露店で販売されている品種はいくぶん多いようだが、社会的距離はたいてい保たれていない。売り手と買い手が至近距離で密集し、交渉したり現金を受け渡ししたりしている。

 匿名希望の配送員によると、住宅地から離れたところに設置された柵の近くに荷物を置いているという。2日前に仕事を再開した彼にとって、この仕事は性に合っているそうだ。物流倉庫には、数ヶ月前の荷物が山積みになっている。

「いま配送しているのは、顧客が1月末の春節(旧正月)前に注文したものだ。ウイルス発生後に購入された必需品を見分けるのは難しい」と同氏は話す。

By The Associated Press
Translated by Conyac

Text by AP