たった16分間の睡眠不足が、翌日の仕事における集中力を低下させる要因にもなる

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著:Soomi Leeサウスフロリダ大学、Assistant Professor of Aging Studies)、David M. Almeidaペンシルベニア州立大学、Professor of Human Development)、Orfeu M. Buxtonペンシルベニア州立大学、Professor of Biobehavioral Health)、Ross Andelサウスフロリダ大学、Director of School of Aging Studies)

 最近の業績評価が今一つ芳しくない、また、空想にふけりがちであったり、判断を誤ったりすることはないだろうか。

 この要因は、仕事ではなく睡眠に関することかもしれない。そして、すべてにおいて自分に過失があるというわけでもないのだ。

 我々はそれぞれに異なる側面から、健康と加齢についての研究を行っている。最近行った調査では、睡眠不足により判断力が低下し、仕事中の集中力の欠陥や注意散漫を引き起こすことが明らかになった。睡眠を優先することで、業務における認知能力が改善される可能性もある。

◆睡眠時間が少なくなるほど、集中力は低下する
 アメリカのあるIT企業に勤める中高年層の従業員130名を対象に、日記形式のアンケート調査を8日間にわたって行った。その結果、日中の「認知的干渉」、つまり集中力の低下や注意散漫の度合いは前日夜の睡眠の状態によって予測できることが示された。

 この調査では、9項目の質問について、通常よりも集中力の低下や注意散漫を実感した頻度を5段階の数値で示し(0=全くない、4=頻繁にある)、我々はその平均値を算出した。質問の1例を挙げると、「今日、頭の中で考えがまとまらない状態はどのくらいの頻度でありましたか」といった内容だ。

 いつもより短時間で質の悪い睡眠が続いた日は、従業員の回答が示す認知的干渉度はより高くなった。睡眠時間が通常より16分間短縮されるだけで、翌日の認知的干渉度合いを示す数値は全体的に1ポイント上昇した。

 また、認知的干渉をより多く実感した日には疲労を感じ、就寝時間、起床時間ともいつもより早まることが回答されている。

 前日夜の睡眠と翌日の認知的干渉の関連性は、平日により顕著に表れ、休日にはあまり明確でなかった。平日には認知的干渉を実感する機会が多く、そして睡眠時間を確保する機会が少ないのだと考える。健康的で最適な睡眠を得ることを優先することで、結果的に業務効率を上げ、仕事のパフォーマンスを高めることにつながると調査結果は示唆している。

 この調査結果から、睡眠時間の短縮によって仕事の生産性が低下すると推定する。以前研究室で行った実証研究では、睡眠時間を4、5時間に制限するなど、睡眠不足によって認知機能検査の結果にマイナスの影響がもたらされることが明らかになった。

 しかしながら、これまでは睡眠と認知機能の関係性について、調査対象者の日常生活の分析を行う観察研究が十分に行われていなかった。前日夜に十分な睡眠が得られなかったことで仕事中の思考力低下や意思決定の遅れを引き起こし、ミスの増加につながるという結果は、我々が行った実際の調査によって裏付けられたものだ。

◆睡眠時間が少なくなるほど、ストレスは増える
 以前に行った共同研究において筆者、スミ・イはよく眠れなかった次の日は、より多くのストレスを感じ、フラストレーションを引き起こす可能性もあると明らかにした。調査対象者からは、いつもより短時間で質の悪い睡眠が続いた日には仕事におけるストレスを家庭生活に持ち込むことが増え、運動をしたり子どもたちと過ごしたりする時間が少なくなるとの回答を得た。

 調査は双方とも、より広範に調査を行う「Work, Family & Health Study(仕事と家庭生活、健康に関する研究)」からのデータを用いて行われた。これはIT企業や介護施設など、多角的な分野における企業を分析することを目的としている。

 2件の調査では、高所得者が多く専門職の象徴ともいえるIT企業社員を対象にした。この分野の職業に就く人々は長時間勤務であり、仕事とプライベートの境界線があまり明確でない傾向が強い。超過勤務や終業後の度重なる電話対応、夜遅くまでのメール対応、そして7時、8時から始まる早朝ミーティングなど、従業員の睡眠時間が削られている可能性がある。

 従業員の睡眠の問題は、意思決定や注意散漫など、あらゆる形で業務上のパフォーマンスに影響を及ぼしていることが調査結果に示されている。睡眠に関する訴えは、特に仕事をもつ成年者にはよくみられることである。アメリカでは、働くおよそ40%の人々が不眠症状を訴えている。この症状によって、中高年層の従業員の日常生活機能に支障が出ることもある。それゆえに、健康的な睡眠を心がけることは、キャリアを成功させるためにも大切だと考える。

 同様に、経営者は従業員の睡眠を改善し、少なくとも組織立って妨害することのないよう取り組まなければならない。質の良い睡眠によって生産性が向上し、職場におけるストレスが軽減されるかもしれない。

◆睡眠にまつわるヒント集
 睡眠を優先して確保するためには、個人的に、また組織をあげて行動を起こす必要がある。勤務時間外の電話応対や、義務感から終業後にメール返信すること、そして早朝から始まるミーティングなど、睡眠の妨げとなる業務を最小限で良しとするような組織文化を企業が創り出し、支持することは可能ではないだろうか。

 従業員もまた、個人がそれぞれに毎日良い睡眠をとることを習慣化することはできるだろう。例えば、夜9時以降は電話の電源を切り、メール返信は行わないなど、就寝前にはリラックスした時間を過ごし、少なくとも7時間の睡眠時間を確保することである。

 定期的に運動を行うことも質の良い睡眠を得るためには効果的である。するべきことが多すぎて、睡眠や運動に時間を割くことができないと感じる従業員が多いことが課題としてある。しかしながら、睡眠不足と成果の上がらない業務を巡る悪循環を断ち切る必要がある。日常的に睡眠時間を奪われることで、この先何年か後の健康について、そして翌日の生産性についても多大な負担を強いられることになる。

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by Mana Ishizuki

The Conversation

Text by The Conversation

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