「中国人に雇用、文化を奪われる」イタリアで高まる中国系移民への反感

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 イタリアは、ヨーロッパで最も中国人人口の多い国の一つだ。移民の多くは、10年~20年以上前に渡ってきた人々で、現地で生まれた2世も成長し、さまざまなビジネスにも参入するようになった。彼らに雇用や文化を奪われると考えるイタリア人も多く、差別や偏見が広がっている。

◆「悪いのは中国人」伝統を壊されたイタリア人の怒り
 ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)は、戦後のイタリアの復興を助けたのは、職人の真面目な労働だったと述べる。12世紀から織物で有名なトスカーナ州プラートの町にも、戦後多くの労働者が集まった。小規模で専門的な職人技で作る製品は高い評価を受け、町の企業家は成功を収め、家族的経営で地元に安定した雇用を生み出した。

 ところが1990年代に入ると、安い労働力で作られた中国製の生地に顧客を奪われた。2001年から2011年の間に、プラートの繊維企業は半減。工場の閉鎖が相次ぎ、雇用も奪われた。冬の時代に入ったプラートにやってきたのは中国人だった。彼らは閉鎖された工場を買い取り、新たに工場を増やして、中国から輸入した生地でイタリアンスタイルの衣類を製造した。そして「メイド・イン・イタリー」として出荷している。

 プラートには2万人以上の合法な中国人移民がおり、違法移民も1万5000人はいるとされている。中国人向けの商店やレストランが現れ、郊外には中国人所有の輸出用衣類の倉庫が並ぶ。地元のイタリア人女性は、町の姿を変える移民を快く思っておらず、イタリアで生まれ育ちイタリア語を話しても、中国人はイタリア人ではないとNYTに話している。

 一方中国人コミュニティは、人種差別的非難のなか中国系移民の地元経済への貢献が軽んじられていると抗議している。親が始めた衣料品会社の生産を監督する移民2世は、中国人が来てから町の雇用は増えたとし、空の倉庫もいっぱいになったと話す。中国人は雇用を奪ったのではなく、むしろ作ってきたと主張している。

Text by 山川 真智子