受信料払いたくない高齢者、テレビ見ない若者……イギリス公共放送に迫る危機(1)

Willy Barton / Shutterstock.com

♦︎若年層のテレビ離れが追い討ち
 年金受給者らからの反発だけでなく、若年層の視聴時間の落ち込みもBBCが直面する大きな課題だ。オフコムの調査によると、16歳から24歳までの若者のうち、調査前の1週間にBBCを視聴した者は半数に満たなかった。さらに、時事ニュースをBBCで視聴するのは10人に1人未満であるほか、若年層の3/4以上はSNSをニュースの情報源としたことがあると回答している。英テレグラフ紙によると、若年層の視聴時間は1日あたり平均1時間22分(BBCが運営するラジオとネット放送を含む)にまで落ち込んでおり、これは全年齢層の平均の半分を切る数字だ。

 若者離れの原因としてフィナンシャル・タイムズ紙は、動画配信のNetflixや音楽配信のSpotifyなど、オンラインサービスの台頭を指摘している。こうしたサービスがとくに30歳未満の若い視聴者層をBBCから奪っており、局の重役は「非常に深刻な状況」だと認識しているようだ。同局の元局長によると、主要チャンネルであるBBC1の視聴者の平均年齢は、現在61歳にまで上昇している。

♦︎公共放送の危機
 放送をめぐる環境はめまぐるしく変化しており、BBCが時代のシフトに対応できていないのではないかという厳しい指摘が出ている。オフコムはBBCに関する年次調査報告書のなかで、「ほかの公共放送と同様、BBCは急速に変化するメディアの状況を前にぜい弱」との見解を示している。若い視聴者らを獲得できなければ「ライセンス料に対する公共の理解は将来的に徐々に失われる可能性がある」と述べ、「これはBBCの将来的な継続性についての重大なリスクだと確信している」と厳しい認識を示した。報告書はほかにも「(BBCが)若い視聴者の獲得に失敗したならば、現在の形態では事業の維持が不可能となる可能性がある」と述べており、事業継続への危機感をあらわにしている。

 BBCは2019年のゴールデン・グローブ賞受賞作品を5本、英国アカデミー賞テレビ部門受賞作品を16本製作するなど、高品質な番組作りで知られる。しかし、急変するメディア環境を前に、若者・高齢者のつなぎ止めに苦労しているようだ。

続編の「ネット配信、スクランブル化が救いの手に? イギリス公共放送に迫る危機(2)」では、こうした状況をBBCがいかに乗り切ろうとしているのか、その対応をお伝えする。

Text by 青葉やまと