ニューヨーク、中心地乗り入れの車両から「混雑料金」徴収を検討

AP Photo / Julie Jacobson

 全米で最も通行料の高い道路のいくつかが周囲を長く取り囲むニューヨーク市は、マンハッタンの最も混雑の激しい地域に車を乗り入れようとする運転手から混雑料金としてさらに多くの通行料を課す態勢を着々と整えている。

 ロンドン、ストックホルム、ミラノ、およびシンガポールでは既にそのような施策が運用されているが、今回の計画は、ニューヨークをアメリカでそのような施策を導入する最初の都市にしようというものだ。さらに混雑料金が必要となるのなら、公共交通機関を利用するほうが良いとドライバーたちに考えさせることが狙いだ。

 計画の細部は今後、詳細に議論する必要があるが、郊外からの通勤者、ニューヨークのマンハッタン以外の行政区に住む人々、および配送業界からの根強い反対は残るものの、ニューヨーク州の州都アルバニーの当事者はみな、渋滞に対する何らかの課金が今週、州の予算に組み込まれる予定であることを約束している。

 混雑料金から得られる収入は、首都圏においてますます信頼性が乏しくなっている大量輸送システムの改善に向けて投じられることになるだろう。昨年、諮問機関が発表した提案によると、新たに混雑料金を課すことで1年間におよそ10億ドルの収益が得られるだろうという。

 混雑料金を徴収する対象地域は広く、その地域には60万人以上の人々が住んでいる。対象地域はセントラルパークの南端近くの60番通りからマンハッタン地区の南端までを含む。

 混雑料金の額は未定だが、当初の提案では大半の乗用車の運転手に12ドル、そしてトラックの運転手には最大で25ドルを課すよう提言していた。この料金は、車両が通行する時間帯や曜日によって変動する可能性があるという。

 10年以上前に、当時のマイケル・ブルームバーグ市長が混雑料金の制定を提案したが、不成立に終わった。その後、ニューヨークの地下鉄網が抱える問題の解決が喫緊の課題となり、アプリを利用してライドヘイリングサービスを提供する何千台もの車両が市の中心部に乗り入れるようになったことで道路の渋滞がさらに深刻化した。ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事が2年前に混雑料金の導入支持を表明するまでは、この施策は政治的に大胆な賭けだと考えられてきた。

「我々はついに、より多くの金を政体に払う準備を整えた。そして我々は、交通の混雑の解消に取り組んでいかねばならない。増え過ぎた車を道路上から排除しなければならない。マンハッタン地域では、ハンドルを握ることすらできない」と民主党は4月の第1週にニューヨーク市の公営ラジオで述べている。

 しかし、この提案は依然、もっとも大きく影響を受ける人たちの間に懸念を引き起こしている。電車やバスを気軽に利用することができない郊外からの通勤者、配達することが仕事である業者、および、所用を済ませたりダウンタウンへ友人を迎えに行ったりして高額な通行料金を払う必要が生じるニューヨークのマンハッタン以外の行政区に住む人々などが該当する。

 配達業を営むロレンツ・スキーター氏は、「小規模企業やニューヨークのマンハッタン以外の行政区に住む人々にだけこの義務を負わせるわけにはいかないはずだ」と語る。同氏の所有する配達用の車両は、対象地域を毎日何回も通過しているため、かなりの混雑料金を支払う義務が生じる。

 通勤や家族の日帰り旅行のため、ニュージャージー州のパラマスからマンハッタンへいつも車を乗り入れているロルフ・スウィントン氏は、1ヶ月に支払うことになる混雑料金は、既に支払っている通行料に対して数百ドルのさらなる上乗せになると話す。

「通行料はとても高額であり、状況は悪化する一方だ。問題は、混雑していない時間帯は、どこへ行くにも公共交通機関はとても不便であるということだ。どうすればいいと思う?」とスウィントン氏は憤る。

 3月からは、タクシーへの乗車、ウーバーやリフトなどライドシェア車両、および他のハイヤー車両の利用は、追加料金の対象となった。その額は、タクシーで2.50ドル、その他の車両は2.75ドルだ。この追加料金は、混雑料金徴収への第一歩とされるものであり、昨年、議会で承認された。

 新たに幅広く徴収するようになった混雑料金がそれらの車両にどう影響を与えるのかについては、議員とクオモ知事がいまなお交渉に取り組んでいる最後まで残った問題の一つだ。既存の通行料の徴収は維持し、タクシーや他のライドヘイリングサービスに関わる車両には、新たな料金を課さないことは選択肢の1つだ。また、より高い料金を課すことで、既存の通行料を廃止することもまた別の選択肢となっている。

 ウーバーとリフトは混雑料金の徴収に支持を表明しているが、多数のタクシー運転手は提案に反対している。近年、低額のライドヘイリングサービスとの料金競争に取り組んできたタクシー業界にとって、さらに混雑料金が課せられると、業界の死活問題になるとタクシー運転手たちは主張している。

 政策立案者によると、この施策の明るい側面は、公共交通機関をさらに良くし、道路を走る車両を減らすためにより多くの資金を得ることができ、人々が交通渋滞に巻き込まれ、車の中でただぼんやりと無駄に過ごしている時間の節約につながることだという。

 ロンドンでは、混雑料金を徴収するようにしたところ、車の台数と渋滞による遅延を削減することができ、対象地域内の平均移動速度が向上した。

 引っ越し会社を経営するリオール・ラクマニー氏は、自社のトラックが混雑料金を課せられる予定の地域へ頻繁に乗り入れているにもかかわらず、混雑料金の導入に賛成する立場をとった。混雑料金の導入が渋滞を緩和するという約束が魅力的だったからだ。

「渋滞が緩和されるのは素晴らしいことだ。混雑が解消するだけで、我々の暮らしは遥かに楽になる」とラクマニー氏は語る。

 クオモ知事が提案した混雑料金の徴収が始まるのは、2021年以降だ。イージーパスのような自動料金支払い、もしくはカメラが撮影したナンバープレートから特定した車両の所有者のもとへ郵送される請求書を使って料金が徴収されることになる。このようなシステムは、市内にあるいくつかの橋やトンネルで既に稼働している。

 混雑料金の詳細はまだ発表されていない。しかし、多くの議員が、低所得層の通勤者や、マンハッタンへ入る時に橋やトンネルの通行料を既に支払っている人々に対する割引制度の導入を要求している。また、ブルックリンからマンハッタンに乗り入れはするものの混雑した地域には止まらず、その代わりすぐにイースト川に沿って高速道路を北上するような運転手に対する料金免除の措置も計画されている模様だ。

 4月2日、ニューヨークのビル・デブラシオ市長はアルバニーを訪れ、混雑料金徴収の支援を呼び掛けてロビー活動を行った。

 州議会議事堂を訪れたデブラシオ市長は記者団に対し、「4月1日は、大規模作戦の開始日だ」と予算成立の期日に言及し、さらに、「これは決定的な瞬間だ。行動を起こすつもりなら、今年すぐに行動せよ」と述べている。

By DEEPTI HAJELA and DAVID KLEPPER Associated Press
Translated by ka28310 via Conyac

Text by AP