マクドナルドの「ドナルド」が十字架に イスラエルのキリスト教徒が激怒

AP Photo / Oded Balilty

 イスラエルで開催されている美術展覧会にて、十字架に張り付けられたドナルド・マクドナルドの彫像が波紋を呼び、国内少数派のアラブ人キリスト教徒による抗議運動を引き起こした。

 数百人ものキリスト教徒は「マック・ジーザス」と題された彫像の撤去を求め、先週、イスラエル北部に位置するハイファ市の美術館でデモを行った。イスラエル警察によると、暴徒により火炎瓶が美術館へ投げ込まれ、また投石によって3名の警官が負傷したという。当局は催涙ガスやスタン弾を用い、群衆を追い散らした。

 1月14日、教会の代表者らは地方裁判所に苦情を申し立てた。血まみれのイエス・キリストと聖母マリアを模したバービー人形など、極めて不愉快な展示品の撤去を命じるよう、裁判所に要請した。

 美術館長のニッシム・タル氏は突然の騒動に驚いたと話す。これは、社会が狂信的に崇拝する資本主義に対する批判を主旨とする展覧会であり、それまで数ヶ月間にわたって展示されてきたのだ。また、ほかの国々においてもこれまで何事もなく展示されている。

 ソーシャルメディア上で、来場者によってシェアされた展覧会の写真が引き金となり、抗議運動が発生したと思われる。

 キリスト教徒は、イスラエルのアラブ系市民のなかでごく一握りの少数派であり、特有の難題を抱えているという。

「表現の自由は、異なる社会においては、違った意味で解釈されるという点を理解する必要がある。この作品がキリスト教徒以外に向けられていたなら、世界がひっくり返るような衝撃が生じただろう」と、教会指導者たちへの相談役を務めるワディ・アブ・ナーサル氏は話す。

 イスラエルのミリ・レジェブ文化スポーツ大臣もまた、「罰当たりな」芸術品の撤去を要求した。レジェブ大臣は、国家への「忠誠心」を義務づける法案を推進するために芸術の検閲を行ったとして非難されている。

 美術館は、芸術品の撤去は表現の自由を侵害することになるとし、これを拒否してきた。しかし抗議運動の後、展示場への入り口にカーテンを掛け、芸術には人の感情を害する意図はないと書かれた表示を掲げた。

「これが私たちにできる精一杯のことです。芸術品を撤去すれば、翌日には政治家がやって来て、ほかの作品を下げるよう要求するでしょう。そして最終的には、色とりどりの花を撮った写真のみが展示されている、ということになりかねないのです」と、タル氏は話す。

 しかし、作品の撤去を求める人々の理解を得るには、ほとんど効果はなかった。14日、抗議に参加する人々は依然として美術館にテントを張って野営し、「信仰に敬意を」と書かれたメッセージを掲げていた。スプレー塗料で十字架が描かれた道路標識や、先週の衝突時に破壊されたままの窓の前でキリスト教徒が報道陣に不満を訴える様子を、警察官は注意深く見守っていた。

「これはとても攻撃的であり、芸術とは考えられません。平和的な集会を開き、ろうそくの灯で夜を徹して祈りを捧げることを続けていきたいと思います。解決にたどり着くまで平穏ではいられません」と、ハイファ市在住の芸術家であり、敬虔なキリスト教徒であるアミール・バラン氏は述べる。

「マック・ジーザス」を手がけたフィンランド人アーティスト、ヤニ・ライノネン氏も同様に作品を取り下げるよう依頼したが、その理由は異なる。

 ライノネン氏は、パレスチナ主導で行われている「BDS(ボイコット、投資撤収、制裁)」運動を支持していると話す。パレスチナ人に対する政策を見直すようイスラエルに圧力をかけるための運動である。多くの海外アーティストに対し、イスラエルでの公演をキャンセルするよう訴えるなど、運営組織はここ数年で顕著に効果を上げてきた。

 美術館は、宗教的もしくは政治的圧力に屈することはないとタル氏は述べる。

「私たちは、発言の自由、芸術の自由、文化の自由を擁護し続けます。そしてそれらを壊すつもりはありません」

By AREEJ HAZBOUN and ISABEL DEBRE, Associated Press
Translated by Mana Ishizuki

Text by AP