難しすぎる大学入試の英語試験、ドイツ学生が悲鳴 ネイティブでも無理?

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 ドイツで大学を目指す高校生は、「アビトゥーア」と呼ばれる大学進学資格のための試験を受けることになっている。そのアビトゥーアだが、今年のバーデン=ヴュルンベルク州で出題された英語の試験問題が超難解で、受験した学生から「不公平」だという批判が上がった。彼らの批判を考慮して採点するよう求める嘆願書にも多くの署名が集まっており、試験のあり方が問われている。

◆ストレスもマックス?人生に関わる大事な試験
 アビトゥーアは、大学進学を目指す高校生にとって、人生の節目となる通過儀式だとAPは解説している。高校卒業資格と大学入学資格を兼ねたようなものだが、この資格を取得すれば大学で学ぶことができ、日本のように個別の大学受験をする必要はない。

                                                                                                                 

 ただし最後のハードルとも言える試験の成績が志望校の合否に大きく影響を与える。そのため数ヶ月の間、多くの受験生、保護者、そして教師たちが試験のためにストレスを抱えることになる。受験生の気が散らないよう、テスト期間中は下の学年の通常授業を中止する学校もあるということだ。

◆時事問題や難解な単語。本来の英語力とは?
 ボイス・オブ・アメリカ(VOA)によれば、アビトゥーアの英語試験は、受験生の英語の理解とスキル・レベルをテストするもので、英文を読ませ読解力を測る質問が含まれている。2018年は、バーデン=ヴュルンベルク州で約3万1000人が英語の試験を受けたが、多くの学生が近年と比べて「不公平」なほど難解な問題が出題されたと州を批判している。アビトゥーアは全国試験ではあるが、試験問題の設計と配布は、州の教育省が行なっている。

 批判を受けた問題の一つは、「Project Fantasy(空想のプロジェクト)」と「The Realities(現実)」と題された、ブレグジットに関する対照的な風刺画にコメントせよというものだった。これは英語の読解力以外に、時事問題への知識が要求される問題だとBBCは指摘する。

 さらに最も受験生を悩ませたのは、アメリカの作家、ヘンリー・ロスが1934年に書いた小説『Call it Sleep(それを眠りと呼べ)』から抜粋された、以下の「自由の女神」の描写を分析せよという問いだ。

“Against the luminous sky the rays of her halo were spikes of darkness roweling the air; shadow flattened the torch she bore to a black cross against flawless light—the blackened hilt of a broken sword. Liberty.”

 自由の女神の頭の後ろにある光輪や掲げたたいまつなどに隠喩が使われた文章だが、BOAによれば「未知の単語」や「象徴的な意味」があまりにも多く、理解、分析するには難しすぎるという苦情が出ていたという。ソーシャル・メディア上では、ネイティブ・スピーカーでさえも難解だと述べており、あるイギリス人男性は、rowelingという語について「初めて聞いた。でも知らなくても生きていけると思う」とツイートしている(BOA)。

 他にも、非常に文学的で古すぎる単語が頻繁に使われていたという指摘も出ており、アメリカに1年間留学していた学生でさえ、辞書を引かなければ分からない言葉がいっぱいだったと答えている(AP)。日本の受験問題も難解で非実用的な単語を並べたものが多いだけに、英語力の測り方という点では、同じ問題を抱えているのかもしれない。

◆寛大な採点を。嘆願集まるも、州は適切と判断
 学生たちは前述の例などを示して出題が読解力を測るには不適切だとし、そこを考慮して採点してほしいと州政府に嘆願書を出している。オンライン署名はすでに3万5000以上集まっているという。一方州教育省は、外部専門家も交えて試験問題の再チェックを行い、出題は適切だったと結論している。

 VOAによれば、バーデン=ヴュルンベルク州の試験プロセスの責任者であるスザンヌ・アイゼンマン氏は、採点する教師がしっかり判断してくれると信頼していると発言し、受験生は試験結果について心配し過ぎる必要はないと話している。

 BBCによれば、英語試験に関する嘆願は他の州でも昨年起きており、それにより採点が見直されたという。ちなみに学生たちから苦情が出た試験問題には、イギリスのハリー王子の「ボソボソつぶやくような」不明瞭なスピーチが含まれていたということだ。

Text by 山川 真智子

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