「無意識の偏見」を問題視 スタバ黒人逮捕受け、アメリカ人の反応

Michael Bryant / AP Photo

 米東部ペンシルバニア州の州都フィラデルフィアのスターバックスで今月12日、男性2人組が同店のマネージャーによって警察に通報され、駆けつけた警官に逮捕された。

 ここまで聞くと、「何か悪いことをして警察に追われていたのだろうか」と思うが、実はそうではない。逮捕劇を撮影し、ツイッターに投稿した目撃者によると、逮捕された男性2人はごく普通の人々で、何も買わずに席に着き、友人を待っていただけだったという。

 これはもちろん、スターバックスや他のカフェで待ち合わせをしたことのある人なら誰でも身に覚えがあるはずの行為だ。先に着いて席に着き、待ち合わせた人が到着した後にコーヒーやペストリーを買うというのもごく普通の習慣である。しかし、誰もが深く考えることもなく行っているごく普通のことが、友人を待っていたのが黒人男性の2人組だったことから「警察を呼ばれる→逮捕」という仰天の展開となったのだ。

                                                                                                                 

◆逮捕事件は「2018年の人種差別」
 上記のツイッターを投稿した同市在住のライター、メリッサ・デピノさんは、男性2人が逮捕された際、たまたま店内の近くに座っており、一部始終を見ていたという。デピノさんはツイッターに、「彼らは何も購入しなかったために警察を呼ばれた。友人を待っていただけで、他には何もしていない」と投稿している。デピノさんの動画にはまた、男性2人が逮捕されている最中に待っていた友人(白人男性)が現れ、警察に「僕を待っていただけなのにどうして逮捕するのか。(中略)これは人種差別だ」と抗議した様子も映されている。

 この一件についてフィラデルフィアのジム・ケニー市長は、「フィリー(フィラデルフィアの愛称)が、少なくとも今までにわかっている事実から、人種差別が2018年にどのように行われているかについてニュースの一面に取り上げられ、心が痛い。フィリーの他のビジネスと同様に、スターバックスも皆が同じ扱いを受ける場所でなければならない」とツイッターに声明を発表した。

◆謝罪するスターバックスと開き直る警察
 しかし男性2人を逮捕し、スターバックスと同様に批判を受けているフィラデルフィア警察は、フェイスブックでリチャード・ロス同警察署長の声明を発表。ロス氏は「通報を受け、現場で男性を逮捕した警官は何も間違ったことをしていない」と述べ、男性2人の逮捕が間違いであったことを否定している。

 デピノさんの別のツイッター投稿によると、逮捕された男性2人は起訴されず、翌13日の午前1時30分頃釈放されたという。15日になってようやくスターバックスCEOのケビン・ジョンソン氏は同社サイトに声明を公表し、「私たちは深く謝罪し、起こったことを改善するためには何でもする(中略)男性2人が逮捕に至った経緯は間違っていた」と謝罪した。

スターバックスは17日なって再び同社ウェブサイト上に声明を公表。今月29日に米国内の8,000店を閉め、17万5,000人の従業員に対して人種的偏見に関する教育を行うと述べた。

◆事件で問題となった黒人男性への「無意識の偏見」
 さて、スターバックスにおけるこの黒人男性2人の逮捕により、ツイッターなどのプラットフォームでアメリカ人が問題として挙げているのは「implicit bias(無意識の偏見)」という行為だ。

 男性2人はスターバックスのテーブルに着き、待ち合わせた友人の到着を席に着いて待っていただけで警察を呼ばれ逮捕された。スターバックスで待ち合わせをする人はよくいるし、筆者もこれまで数え切れないほどした経験がある。またコーヒー1杯を買って、そのコーヒーがなくなった後でも数時間いたこともあれば、とりあえず席に着き、後で来る友人を10~15分程度待っていたこともある。このような行為が普段の生活で問題になることはほぼない。

 しかしこのシチュエーションで、スターバックスで待っていたのが黒人男性2人組であったため、マネージャー女性(白人)の頭の中に根拠のない恐怖感が芽生えたのだろう。彼女の頭の中には「黒人男性→犯罪」などの「無意識の偏見」が強くあり、警察に通報すべきだと早まってしまったのかもしれない。マネージャーは他の人種にはしないであろう行為を自分の中で正当化し、黒人男性客2人に対して「警察を呼ぶ」という愚かな行動を起こしてしまったのである。

 今回の一件では、2018年のアメリカ、しかも普段はリベラル寄りといわれるフィラデルフィアという大都市でこのような行為が行われたことに多くの人々が驚愕した。しかし、これはスターバックス、そしてアメリカだけの問題ではない。今回の事件は、普段自分が他者に対して持っている「いわれのない偏見」を自覚し、その間違いに気付く良い機会でもあるのだ。

Text by 相馬佳

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