東京は世界都市「ビッグ7」、京都は「インフルエンサー」に 都市比較調査

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 総合不動産サービス会社のJLLは、 The Business of Citiesと共著で最新の都市比較インデックスレポート「世界都市の10類型 未来都市創生への道程」を発表した。都市間比較による事業機会の判定をする「都市の科学」は、不動産戦略における選択をする上で、重要になっている。昨今では、成長力、生活しやすさ、スマートシティ、レジリエンス(強靭さ)、スキルなどにおける都市間の競争力が増しており、本レポートでは、不動産投資家やデベロッパー、企業に提供しうる各都市の成長過程、課題、命題、機会を観測し、新たに4つのカテゴリーと10種類の都市グループを特定したという。

 日本の都市としては、東京が確立された世界都市の「ビッグ7」に、京都が新たな世界都市の「インフルエンサー」に、大阪がハイブリッドと成長エンジンの「国内成長エンジン」に選ばれている。

以下にて、4つのカテゴリーと10種類の都市グループを紹介する。

◆カテゴリー1 : 確立された世界都市
最もグローバル化した都市で、企業・資本・人材の集中度が最も高く、競争力の優れた大都市

1.「ビッグ7」:ロンドン、ニューヨーク、パリ、シンガポール、東京、香港、ソウル
世界の商業用不動産への投資額の1/4近くを占めるこのグループは、流動性の高い不動産市場と独自のソフトパワー(惹き付ける力)により、多国籍企業やクロスボーダー投資家が最初に注目する都市。一方で継続的な成長維持が大きな課題となっている。

2.「挑戦者たち」:ロサンゼルス、上海、北京、アムステルダム、シカゴ、サンフランシスコ、トロント、マドリード、シドニー、ワシントンDC
直近の市況サイクルで不動産投資が最も急速に増加した都市グループ。国内の経済圏と海外の経済圏へのゲートウェイとしての接続性、効果的な都市規模と市場の大きさ、世界資本からの信頼度、潤沢な人材、多数の都市における多様な産業など上位都市が持つ都市的資産を拡大している。

◆カテゴリー2 : 新たな世界都市
都市運営の行き届いた中規模都市で、不動産投資や企業、人材の誘致で敏捷性に優れており、インフラ、生活の質の高さとニッチな専門性を提供しうる都市

3.「イノベーター」:オースティン、ベルリン、ボストン、デンバー、ダブリン、ミラノ、ミュンヘン、サンディエゴ、シアトル、シリコンバレー、ストックホルム、テルアビブ
イノベーションや起業家精神を育む科学や技術、ビジネス風土について世界トップクラスの能力を有しており、都市の経済規模との比較における不動産投資額が最も大きなグループ。一方で、より万能な都市になるために必要な住宅、インフラ、アーバンライフスタイルにおけるキャパシティの問題を抱えている。

4.「ライフスタイルシティ」:オークランド、ブリスベン、コペンハーゲン、ハンブルク、ヘルシンキ、メルボルン、オスロ、バンクーバー、チューリヒ
過去数回の市況サイクルの間に賃料が最も上昇したグループ。生活の質の高さと都市の国際的な魅力が最も強力なブランド力となっており、コンパクトで中密度の都会生活、秀逸な公共スペースや公共サービス規格が、高等教育、クリエイティブ産業、観光、科学などの主要輸出市場の成長を後押ししている。

5.「インフルエンサー」:バルセロナ、ブリュッセル、フランクフルト、ジュネーブ、京都、マイアミ、ウィーン
2000年以降のオフィス賃料の変動幅が小さく、安定した不動産市場を有する都市が多く含まれるグループ。多国籍機関や観光事業、交易機能の場を提供、世界的・地域的な影響力を有している。政治的・地理的条件に恵まれ、世界的な役割とアイデンティティを継承しており、政府間や法律・貿易関連の国際的な意思決定の調整や促進に関わる役割を果たしている。

◆カテゴリー3 : 新興世界都市:
より大きな新興国の経済・政治の中心地で、拡大する国内の需要と消費に応えることで急速に成長し、国際的な貿易と資本のゲートウェイの役割も果たしている都市

6.「メガハブ」:バンコク、デリー、イスタンブール、ジャカルタ、ヨハネスブルク、マニラ、メキシコシティ、モスクワ、ムンバイ、サンパウロ
不動産投資の受け入れ地としての実力はまだ劣っており、今後の不動産透明度の向上が求められるグループ。新興国の主要ゲートウェイであるとともに意思決定の中心地であり、ビジネスや金融サービスに特化した都市。また観光客や、イベント、国際会議、イノベーション機能の誘致を争えるプロファイルと規模を有する。

7.「エンタープライザー」:バンガロール、広州、ホーチミン市、クアラルンプール、深セン、台北
直近の市況サイクルでは、世界で最もダイナミックな不動産市場に含まれており、「新興世界都市」の他グループよりも不動産投資家の誘致に成功しているグループ。ビジネスや起業のハブ都市で事業機会が創出される主要都市。サービス業に特化していることが多く、国内経済においては最大規模の都市であり、ここ数年はビジネス環境の優位性を積極的に活用している。

8.「パワーハウス」:成都、重慶、杭州、南京、蘇州、天津、武漢、西安
「新興世界都市」の中でオフィス賃料の上昇率が最も高いグループ。主に中国都市で構成されている。国家の支援を享受している都市で、世界的な製造業およびバリューチェーンに組み込まれている一方で、その成長は世界の経済、技術、および商品相場のサイクルに大きく依存しており、価格のみならず産業の集積度においても競争力を維持することが急務。

◆カテゴリー4 : ハイブリッドと成長エンジン
9. 「ハイブリッド」:アブダビ、ブカレスト、ブダペスト、ケープタウン、ドーハ、ドバイ、プラハ、サンティアゴ、ワルシャワ
不動産透明度を大きく向上させており、最近の市況サイクルでは商業用不動産のストック量を拡大させているグループ。「新興世界都市」と「新たな世界都市」の両方の性質を併せ持つ中規模都市で、同等の競合都市よりも生活しやすさの点で優れている。

10.「国内成長エンジン」:アトランタ、ダラス、ヒューストン、名古屋、大阪
不動産市場透明度を大きく向上させ、不動産投資額においても世界の上位にランクされる都市グループ。安定的な先進国にみられる都市郡で、大規模な国内市場へのアクセスの恩恵を受け、安定した需要があり、競合相手が比較的少ない都市。自国内の経済における位置付けが高く、今後の中期的な耐久性・持続性が保証されている。都市クオリティ、企業や交易セクターをさらに強化して新しいモデルへのシフトに成功すれば、徐々に「新たな世界都市」へと成長する可能性がある。

Text by 酒田 宗一