「ストローを拒否しよう」イギリスで広がる脱プラスチック 大手パブは紙製を使用へ

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 イギリスでは、プラスチックの使用を控える動きが大手食品チェーン店などを中心に広がっている。プラスチックは分解されずにゴミとなり、海に流れた場合は海洋生物が誤って食べるなどの問題になっている。

◆年間7000万本のストローがゴミに
 イギリスの大手パブ・チェーン「ウェザースプーン」が、プラスチック製ストローの使用を今年12月で終了すると発表した。2018年1月からは、生分解が可能な紙製のストローを使用するという。また、これまで飲み物には自動的にストローを入れていたが、今後は客からのリクエストがないと入れない方向だ。

 インデペンデント紙によると、これは「リフューズ・ザ・ストロー」(ストローを拒否しよう)というアメリカで始まった運動の一貫。アメリカでは毎日、5億本のプラスチック製ストローが使用されている。パブやレストランのチェーンによるプラスチック製ストローの配布をなくすことを目指すこの動きが、イギリスにも到達したのだ。ウェザースプーンの今回の決定により、年間7000万本のプラスチック製ストローの使用がなくなることになるという。ウェザースプーンはイギリスとアイルランドでパブ900店舗を展開している。

 インデペンデントによると、ストローは分解されるまでに500年かかる。つまり捨てられたストローはすぐに分解されずに、他のプラスチックゴミなどのようにゴミ廃棄場や海へと流れつくことになる。

 世界経済フォーラムは、毎年800万トンのプラスチックが海に流れ込んでいるとし、2050年までには海には魚よりもプラスチックの方が多くなると予測している。

◆大手チェーンが続々とプラ製品使用中止
 一方でオーガニックな食材を使ったサンドイッチなどを販売しているイギリスの大手ファストフード・チェーン、プレット・ア・マンジェは10月11日、ベジタリアン向けに展開している「ベジー・プレット」の3店舗で、無料の給水所(浄水器を通った水道水)を設置したと発表した。ペットボトル入りの水に並行して、再利用が可能なガラス製のボトルを販売する。「どちらを選択するかは明らか」としながらも、この措置は、顧客がペットボトル入りの水を購入するのと、ガラス製ボトルを買って無料の水を詰めるのと、どちらを選ぶのか顧客の好みを理解するための試験的なもの、としている。

 日本でも、スーパーなどでビニール袋の使用を削減する動きがあるが、イギリスではこの取り組みとしてビニール袋が有料になっているケースが多い。しかしテレグラフ紙によると、イギリスで最大のスーパーマーケット・チェーンのテスコが、これまで5ペンス(約7.5円)で売っていた使い捨てビニール袋の販売を8月28日以降はとりやめている。代わりに、何度も使えるプラスチック製の袋を10ペンス(約15円)で販売。こちらのバッグは再生プラスチックが94%使用されており、壊れた場合は無料で何度も交換できるという。

 テレグラフによると、テスコは2015年にビニール袋の有料化を打ち出し、ビニール袋の使用を15億枚削減できた。しかしそれでも年間7億枚を販売しており、今回の決定で全体的なビニール袋使用の削減に大きくつながると、テスコは期待している。

◆私たちにできること
 同様に、使い捨てのコーヒーカップも問題になっている。ガーディアン紙(10月11日付)によると、年間25億個のコーヒーカップが廃棄されており、リサイクルされているのはわずか1%だ。現在イギリス全国にはコーヒー店が2万店舗あり、2025年にはこれが3万店に増え、廃棄されるコーヒーカップは30億個に増えるとみられている。

 ガーディアンは、コーヒーカップにはプラスチックが使用されているため、特殊なゴミに分別しなければリサイクルされないと指摘。イギリスの政党「緑の党」の議員は、再利用が可能なカップを使うことを推奨している。コーヒー店によっては、自分のカップを持っていけば安くなるなどインセンティブを設けている店舗もあるが、利用率はわずか2%だという。

 ガーディアンは別の記事(9月26日付)で、プラスチックの使用を減らすために私たちができることをいくつか提案している。「ペットボトル入りの水をやめる」、「自分のカトラリーを持ち歩く」(イギリスではテイクアウトなどの食べ物は割り箸ではなくプラスチック製のナイフやフォークを使うため)、「自分のカップを持ち歩く」、「買い物の時はビニール袋ではなくエコバッグを使う」、「シャワージェルやシャンプーの使用をやめる」(石鹸は紙に入っているのでそちらの使用を推奨)などだ。

 現代の我々の生活で取り入れるのは難しいものもあるが、まずは自分ができる限りで意識してみることが大切かもしれない。

Text by 松丸 さとみ