セクハラ被害、もう黙っていない! 世界に広がる「私も」運動、社会を変えるか

Mihai Surdu / Shutterstock.com

 敏腕映画プロデューサー、ハービー・ワインスティーン氏がセクハラをしたという疑惑で、ハリウッドが揺れている。ワインスティーン氏のケースにとどまらず、ソーシャル・ネットワーク(SNS)上では自分もセクハラの被害者だ、と告白する「#MeToo」(私も)と訴える社会的な動きへと拡大していった。アメリカの上院議員もテレビのインタビューで自分のセクハラ被害体験を語り、「#MeToo」の動きに加わった。

◆そもそもの始まり
 ハービー・ワインスティーン氏は、映画、『パルプ・フィクション』や『恋におちたシェイクスピア』などを手がけた人物だ。こうした作品名を聞いただけで、どれだけの大物か分かるだろう。

 そもそもの話は10月5日に米紙ニューヨーク・タイムズが、1990年代から30年近くにおよぶワインスティーン氏のレイプ疑惑やセクハラ疑惑を取り上げたことが始まりだった。その後、次々と「私もワインスティーンにセクハラをされた」、「レイプされた」などと声を上げる女性たちが現れ、英紙ガーディアンが10月21日付でまとめた記事によると、その数は50人以上に上っている。

◆「MeToo」(私も)運動
 10月15日、女優のアリッサ・ミラノさんがツイッターで、「もしセクハラをされたり性的暴力を受けたりした経験があるなら、このツイートに「me too」(私も)と書いて返信して」と呼びかけた。これがその後、ハッシュタグを使った「#MeToo」という動きとなった。このツイートには10月25日現在、6万8000件以上の返信があり、2万5000件以上のリツイートと5万3000件以上のいいね!を集めている。また、レディ・ガガさんやデブラ・メッシングさんなど多くの著名人も「#MeToo」と投稿している。

 10月24日付の CBSニュースがツイッター社に確認したところによると、#MeTooのハッシュタグは1週間ほどの間にツイッターで170万回使用された。#MeTooを付けたツイートの数が1000以上に達した国は85ヶ国に上ったという。一方、フェイスブックでは「MeToo」の動きが始まって24時間以内に、世界中の470万ユーザーから「MeToo」に関する投稿、コメント、リアクションが1200万件以上あった。アメリカでは、フェイスブック上で自分の友達が「MeToo」と投稿した、という人の割合が45%に上ったという。

◆SNSの外で広がるMeToo運動
 #MeTooのSNS上での拡散以外にも、セクハラの被害者が声を上げる動きは広がっている。NBCニュースは、アメリカの上院議員全21人に、セクハラに遭った経験について話してくれるよう依頼した。すると、4人の議員(全員民主党員)が、カメラの前で自らの経験を語ることに同意した。「政府の中で最も力のある女性でさえ、MeToo(自分もセクハラをされた)と言う人がいる」として、社会に出たばかりの若い頃に経験した、同僚から事務所で追いかけられた話や、力のある男性議員に言われた性的な冗談など、生々しい経験談(ビデオ)を NBCニュースのサイトに掲載している。

 またセクハラ被害にあった女性たちが声を上げている動きを受けて、大勢の女性からセクハラ行為を非難されるハリウッド関係者が新たに現れた。米紙ロサンゼルス・タイムズが22日、今度は映画監督のジェイムズ・トバック氏にセクハラされたという38人の女性たちの話を掲載したのだ。

 この女性たちの話から、トバック氏が、自分が採用した女性や仕事を探している女性、もしくは単に道ばたで出会った女性に対し、性的な嫌がらせをしていた疑惑が浮上している。38人のうち警察に相談した人は皆無だった。しかしトバック氏はロサンゼルス・タイムズに対して、これまでの22年間は糖尿病や心臓病を患っているので、女性たちが主張しているようなことをするのは生物学的にムリ、として全面的に否定している。

 ガーディアン(10月25日付)によると、ワインスティーン氏のセクハラ騒ぎが発覚して以来、アメリカ最大の反性的暴力の活動団体がセクハラに関して受けた相談電話の件数は21%増加した。これまで黙っていたセクハラ被害者が、ワインスティーン氏の一件やMeTooの動きを受けて、実際に訴える勇気をもらったということなのかもしれない。

Text by 松丸 さとみ