「コロンブス、ワシントン像も撤去すべき」白人至上主義への抵抗気運高まる 米国

Osugi / shutterstock.com

 白人至上主義に対する抗議として、黒人や先住民などを不当に扱った指導者の像を撤去・破壊する動きが全米に広がっている。ついにはアメリカ大陸を「発見」した「英雄」であるコロンブスの像にまで矛先が向いているようだ。歴史上のヒーローが窮地に追い込まれているのは何故なのだろうか?

◆偉業から一転、近年広まる新たなコロンブス観
「新大陸を発見した航海者」というのが従来のコロンブスに対する歴史的評価だったが、近年ではこの表現が見直されているようだ。先住民族がいた土地を「発見した」という白人視点の表現が不適切とされるほか、コロンブス一行が先住民を迫害していたことが広く認知されてきている。

 FOXニュースによると、人種によっても評価が分かれるようだ。コロンブスがイタリア出身であることから、イタリア系アメリカ人は一般に英雄視する傾向が強い。一方、先住民への虐殺が行われたカリブ諸国、特にプエルトリコとドミニカ系のアメリカ人は、先住民の奴隷化や大量虐殺に強い嫌悪感を示している。

 コロンブス像のうち一体が設置されているメリーランド州の地方紙『ボルチモア・サン』も、新大陸の発見は奴隷化と残虐な行為を美化した認識に過ぎない、と指摘する。同州のコロンブス像が21日前後に何者かに破壊されるなど、過激な動きも起きているようだ。これまで白人の視点で語られてきた歴史観だが、ここに来て急速に再評価する動きが広がっている。

◆ニューヨーク市の政治家たちが動き出す
 こうした中、ニューヨークに設置された有名なコロンブス像を巡っても、政治的な動きが起きている。FOXニュースが伝えるところでは、この像は台座を含む全高が23mにも達する大きなもので、セントラルパークに隣接した観光名所になっている。

 NBCニュースによると、この像も撤去の可能性があるようだ。ニューヨーク市長は、ヘイトの象徴となり得る各種モニュメントを90日間かけて議論し、存否を決定すると発表した。先日発生した白人主義者との衝突事件を受けた措置であり、問題のコロンブス像も対象に含まれると見られる。

 ただし、コロンブスには根強い擁護派も存在する。同紙ではライバルとなる共和党議員の声として、「アメリカを作った」コロンブスへの攻撃を非難するコメントを伝えている。また、地元紙ニューヨーク・ポスト(8月23日)も、「ジョージ・ワシントンやトーマス・ジェファーソンらの像も撤去するのか」との別の議員からの皮肉を掲載している。ジョージ・ワシントンは偉人として知られる一方、自ら黒人奴隷を所有していた。コロンブスを見直すならアメリカの絶対的ヒーローさえも断罪されることになる、との論理のようだ。

◆コロンブス以外にも広がる歴史観の見直し
 先の議員の発言は、まさかジョージ・ワシントンまで見直しの対象にならないだろうと高を括ったものだが、実は認識を改めるべきとの声もある。FOXニュースは、ラシュモア山国立記念公園のジョージ・ワシントンらの像が近年批判を浴びつつあると伝える。切り立った岩肌に刻まれた4人の歴代大統領の彫像はあまりに有名だ。同メディアによると、これらの像は先住民であるラコタ族から土地と山を接収して建造されていることから、奴隷を所有していたワシントン自身の人物像の再評価と相まって議論の対象になっているようだ。

 記事では他にも複数の「歴史的英雄」を挙げ、これまで無害とみなされてきた像に厳しい視線が向けられつつあるとしている。白人至上主義の台頭に対する反動として、これまで一方的に白人の視点から語られてきた歴史認識を改める機運が高まっているようだ。

Text by 青葉やまと

Recommends