「日本の若者は内向き」は誤解? 留学阻む壁とは… 英機関調査で明らかに

 日本から海外に留学する学生の数が減り続けている。2004年に最多の8万3000人を記録以降は下り坂で、2011年には5万7501人にまで下落した。その理由として広く捉えられているのが「日本の学生は内向き傾向である」という見方だ。

 しかし、英国際文化交流機関『ブリティッシュ・カウンシル』が行った調査によると、日本人学生の留学を阻んでいるのは「内向き指向」ではないことが明らかになったという。

◆留学は就職に悪影響?
 同調査は自己記入方式のオンラインアンケートで、16~25歳の男女学生2004人が対象とされた。回答者は大きくわけて「留学経験のある人」、「留学を希望している人」、「留学を望まない人」の3つに分類される。

 その結果明らかになったのが、実は留学を望んでいる日本人学生の比率は、イギリス、アメリカの学生と大差ないということだった。留学を希望すると回答した日本人学生は33%で、同様の調査がイギリス、アメリカで行われた際その回答はそれぞれ37%、44%と、日本より少し多い程度であったという。

 しかし英米と日本では、ある点が決定的に異なるとのことだ。留学と就職活動との関係である。英米では留学が「職探しの機会と幅を広げる」と考えられているのに対し、日本では「留学によって就職活動が遅れることが職探しにマイナスとなる」と捉えられているという。

 では留学は本当に就職に悪影響なのだろうか。同調査によると、これも誤解とのことだ。すでに留学経験がある者で「留学による就職活動の遅れにハンデを感じている」と回答したのはたったの3%であったという。しかも、「留学経験を評価する」と考えている企業は約3分の1にのぼり、逆に「とくに評価しない」とするのはわずか14%であるという。

◆三大障壁は言葉・費用・治安
 では何が留学を阻むのか。調査によると、その1位は「語学力の欠落」で、51%が言葉に関する不安を回答とした。続く理由は「費用が高過ぎる」で41%、つづいて「治安への不安」という回答が32%だった。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は「留学生促進には奨学金がカギ」と指摘する。というのも、留学を望んでいないと回答したうちの28%が「奨学金があれば意見を変えるかも」と回答したとのことで、やはり高額な費用が重い足枷となっているようだ。

 政府は、国際競争力のある人材輩出を目的に、2020年までに日本人留学生の数を12万人へと増やす計画を発表した。AFPによると、これは政府による日本人学生の内向き傾向を変えグローバルマインドを育てようという試みであるという。しかしこうした結果をふまえ同調査は、「日本人学生の留学促進については政府の単純な捉え方よりもさらに深く考慮すべき点が複数ある」との指摘をしている。

◆一般認識とのギャップ
 さらに同調査によると、海外留学をすでに経験した学生は、自国の未来について最も前向きに捉えていることが明らかになった。逆に、自国の未来について最も悲観的だったのは、留学を希望している段階の学生だ。留学をしたくない学生については、自国の将来について「わからない」との回答が最も多かったという。

 その他、今回の調査で判明したポイントは以下のようになっている。

・女子の留学生は男子の2倍
・80%近くが「語学のスキルアップ」を留学希望の目的と回答
・留学経験者の人気はやはり英語圏(アメリカ18%、カナダ12%、オーストラリア12%)
・留学経験者の滞在期間で最も多かったのは「1ヶ月」
・留学希望者の希望滞在期間は「1年」が最も人気

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Text by NewSphere 編集部