“原発再稼働を促進” 電力会社の再生エネ購入中断、海外メディアも注目

 九州電力は9月24日、10月から再生可能エネルギー発電設備に対する接続申込み受付を中止すると発表した。東北電力も同様の発表をした。なお両社は、家庭発電規模10キロワット以下の電力の買取りは続けるとしている。
 
 原子力規制委員会は9月10日、九電による川内原発(鹿児島県)再稼働の申請を認めた。今年冬には稼働を開始するとみられている。
 
 日本のエネルギー政策はこれからどう進んでいくのか。海外各紙がそれぞれの見方を報じている。
 
【再生可能エネルギー普及にブレーキか】
 2011年福島第一原子力発電所の事故から、日本は再生可能エネルギー、特に太陽光発電に大幅な投資をしてきた、とフィナンシャル・タイムズ紙は報じている。もし日本の現在までの全ての太陽光発電計画が認められ実現すれば、計68ギガワットになるという。ドイツの約2倍、世界最大だ。

 しかし、電力会社各社は、計画の見直しを始めているようだ。天候に発電量を左右されやすい太陽光発電に偏れば、電力供給が不安定になる危険があり、現在でも制限を課している。

 アナリストは、電力会社2社の決定は、太陽光発電計画の承認にブレーキをかけるだろうとみている。他の地域の電力会社も、扱うクリーンエネルギーの幅を見直すだろう、と予測した。エネルギー問題のコンサルタント、トム・オサリヴァン氏は、「もし九州電力と東北電力が当分の間(再生可能エネルギーのための)送電線網を提供しないということになれば、電力業界にとって大きな問題だ」(フィナンシャル・タイムズ紙)と述べた。この2社は、全国で最も多くの大規模発電の申請を受けている。

 経済産業省は、2社の決定についてコメントを避けている。2012年に固定価格買い取り制度(エネルギーの買い取り価格を法律で定める方式の助成制度)が導入されてから、キロワット時の価格が42円から32円に下がっていることにも触れていない。

【原発再稼働なくしては日本経済の再生はない】
 これらの電力会社の動きは、地方自治体が、原子炉の再稼働に向かうことを促進するものだ、とフィナンシャル・タイムズ紙は報じている。

フォーブス誌は、震災で多大な被害を被った日本国民のもう原発に関わりたくないと考えるのはよく理解できるが、再稼働から方向を転換するのはひどい間違いだ、と原発を推進する意見を示している。

 福島の原発事故は日本のトラウマとなる経験だったが、本当の悲劇は、原発を使えなくなったその後だ。このままでは成長が停滞を続けるだろう、と危惧している。そのため、良い知らせは、今年の末に2つの原発が再稼働することだ、と同氏は述べる。しかし、2つでは、まだ足りないという。世界で最も栄えている経済を支えるためにも安全を確保したうえで、すべての原子炉の操業再開をすべきだ、と主張している。

【エコ建築を政府が推進】
 一方、ウォールストリート・ジャーナル紙は、「日本はゼロエネルギー構造への転換をすすめている」と題した記事を掲載している。

 大成建設は今年、年間の消費エネルギーと創出エネルギーの収支がゼロになるゼロ・エネルギー・ビルを横浜市に完成した。この自社ビルは、太陽光発電により、平均的なビルに比べエネルギー消費を75%削減できるという。

 しかし、この技術はまだ高価で一般の消費者には手が届かない。建設費はエネルギー費用削減では引き合わない額だ、と同紙は報じている。大成建設は横浜のビルの建設費用を明らかにしていないが、2020年までには、平均的な価格よりも20%増し程度にまで引き下げるという。一般消費者は、実際国の支援を受けている。

 安倍内閣は、2020年までに全ての公的な建物をゼロエネルギー建築にするという目標を掲げている。ヨーロッパ連合(EU)も似たような目標を立てている。また、アメリカのエネルギー省は、2025年までに商業ビルでゼロエネルギー建築を可能とするため、技術と経験を積極的に高めていくとしている。

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Text by NewSphere 編集部