“凍土壁が凍らない…”福島原発の汚染水対策に海外から懸念、計画自体を疑問視する声も

 増え続ける汚染水への対策の切り札として、「凍土壁」建設を進める東京電力が、8日、その工事の現場を報道陣に公開した。しかし、類似の工法を用いた2号機建屋につながるトレンチ(配管用トンネル)の入り口に建設した「氷の壁」は、2か月を経過しても凍結しておらず、凍土壁計画の有効性が疑問視されている。

【トレンチでは失敗】
 「氷の壁」建設の工事が行われたのは、2号機のタービン建屋とトレンチの接続部分。地下でつながっていることから、建屋から流れ込んだ高濃度汚染水が、トレンチ内に1万1000トンも貯まっており、海に流出していると見られている。

 東電は、トレンチの入り口に凍結管を挿入し、周囲の汚染水を凍らせて止水した後、トレンチ内の水を抜き取る予定だった。ところが、「壁」は2か月を経過しても十分に凍結していないことが判明した。

 イギリスのテレグラフ紙によると、東電は、「凍結しないのは水位の変動のせいだ」としている。しかし、トレンチの水が抜き取れなくては、凍土壁建設にも支障をきたすことから、原子力規制委員会の更田豊志委員は「凍結工事が成功していない以上、凍土壁の段階には進めない」と述べ、対応策を出すよう求めているという。

【所長は自信あり】
 凍土壁計画は、1~4号機の周囲1.4㎞に渡り、マイナス40℃の冷却材を循環させる凍結管を約30メートルの深さに埋め込んで、周囲の土を凍結させるものだ。

 現在、建屋に1日約400トンのペースで地下水が流入するとされており、凍土壁により地下水の流入を防ぎ、新たな汚染水の増加を抑えることができると期待されている。

 第一原発の小野明所長は「凍土壁はすでにテスト済みで、凍結することは確認している。私としてはうまくいかないという心配はない」と報道陣にコメントしている(アルジャジーラ)。

【凍土壁は解決策ではない】
 しかし、海外の専門家達は、凍土壁が抜本的解決策にはならないと見ている。

 原子力アナリストのジョン・ラージ氏は、常に電力供給を絶やさないことが必要な凍土壁は、長期的解決策とすることは難しすぎるとし、「長期的取組への短期的解決策」であると述べる(アルジャジーラ)。

 アメリカ原子力規制委員会の元委員長で、現在は原子力改革監視委員会の委員長を務めるデール・クライン氏も、「凍土壁」が最良の手段とは思えないと発言。「科学と政策の間の妥協点を探る必要がある」とするクライン氏は、凍土壁建設のコストも考慮し、リスクとベネフィットのバランスを取るためにも、政府と東電に計画を見直すよう求めている(デイリー・メール紙)。

↓↓海外視点の“リアルなクールジャパン”を知る!NewSphere発の電子書籍発売↓↓

Text by NewSphere 編集部