“イルカ漁許す日本を除名しろ” 保護活動家、世界動物園水族館協会を非難

 21日、和歌山県太地町のイルカ追い込み漁が、17日に囲い込んでいたイルカの屠殺段階に入り、海外各紙は漁を批判的に報じている。今年はキャロライン・ケネディ駐日米大使やティモシー・ヒッチンズ英大使までもが漁への反対を訴え、それに対し菅官房長官が漁を擁護するに至っている。

 太地町のイルカ追い込み漁は毎年9月から4月にかけて行われる。漁師が金属棒で音を立ててイルカの群れを攪乱、入り江に追い込む。数日間閉じ込めた上で選別し、屠殺、または水族館等への売却用に捕獲する(あるいは逃がす)。2009年、アカデミー賞受賞映画「ザ・コーブ」で批判的に紹介され、世界的な注目が集まった。

【残虐性を訴える活動家、違反ではないと言う日本】
 ガーディアン紙やロイターは、漁を監視している過激派海洋保護団体シーシェパードの証言を伝えた。漁師らが朝7時半少し前に推定250頭のイルカ(ロイターによるとその群れのうち少なくとも30頭)を殺し始めたとのことであり、「金属棒が脊髄に刺しこまれ、出血、窒息して死ぬまで放置されました。殺害用入り江に監禁されたトラウマ的な4日間の後、彼らは暴力的な捕虜選択を経験し家族から引き離され、最終的には今日殺されたのです」などと、漁法の残虐性を強調している。両紙は今回、漁師らが現場を防水シートで隠したことも報じている。

 また、「ザ・コーブ」のルイ・シホヨス監督によると、イルカ肉には世界保健機関基準の5000倍以上の水銀が含まれ、食用としても問題があるはずだという。

 菅官房長官は、追い込み漁は合法的な伝統漁法であり、捕鯨禁止条約の対象でもなければ絶滅危惧種でもないと擁護した旨、報じられている。漁法の残虐性を問題視する主張に対し、それに正面から応えない日本政府、という構図に描かれているとも言えるだろう。

【エンジェルを救え・・・イルカを買う水族館の元締めを非難】
 両紙は屠殺されたイルカとは別に、希少なアルビノ(無色素症)の子供を含め50頭以上が水族館販売用に活け捕りとなった(他に一部は海に逃がされた)とも報じている。

「ザ・コーブ」にも出演した元イルカトレーナーの保護活動家、リック・オバリー氏(シーシェパードではなく「アースアイランド協会」のメンバー)はハフィントン・ポスト(米国版)への寄稿で、こうした活け捕りイルカを高値で買う水族館側を、実質的に漁に助成金を与えているようなものだとして非難した。アースアイランド協会は件のアルビノイルカを「エンジェル」と命名しており、世界動物園水族館協会(WAZA)はエンジェルを救えるはずだ、という。

 それによるとWAZAは、すでにその倫理規定において追い込み漁を禁止しているはずなのに、その漁からイルカを買う「太地くじら博物館」等が所属する日本動物園水族館協会(JAZA)を、なぜ除名しないのか、とのことである。WAZAは漁が四百年来の文化的伝統だと言って不介入の姿勢を表明しているが、1979年の太地町史自体にさえ、初の追い込み漁は1933年、本格化したのは1969年になってからだと書かれているという。氏は、「エンジェルや他の飼育イルカとは違って、WAZAはいかに行動するかの選択をする自由を持っている」はずであり、不介入の誤った選択は恥ずべきことだと皮肉っている。

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Text by NewSphere 編集部