「海に浮かぶ風力発電所」への期待 福島沖などで実験進む

 固定価格買取制度を導入するなど、日本は再生可能エネルギー(太陽光、風力、バイオマスなど)の普及に努めている。そのうち注目を集めているひとつが、洋上に風車を浮かべて発電する、「浮体式洋上風力発電」だ。

 すでに経済産業省・丸紅や東京大学などが「福島復興・浮体式ウィンドファーム実証研究事業」を福島の沖合を進めている。悪天候のためスケジュールに遅れは出たが、現在は発電設備を浮かべ試験を実施中で、11月には稼働する見通しだ。

 また28日には長崎県・五島沖約1kmの洋上で、環境省と京都大学などが実用化に向けて実証運転する巨大な風力発電機が完成した。

【日本の優位性】
 日本は海に囲まれており、沖合は、深海と定義される100m以上の深さだ。浮体式風力のリソースの70%以上は深海にあるというから、太平洋に面する日本はそのリソースに恵まれているといえる。2011年の米国エネルギー省のレポートによると、深海の洋上風力のリソースは2000GWにのぼるという。

【日本の取組み】
 洋上風力発電を展開するにはば、風車を安定させる浮体の技術が必要不可欠となる。これについては、各社・各大学が実用化を目指し開発を行っている。例えば、福島沖で実証実験を手がける、前述の「福島洋上風力コンソーシアム」には、丸紅、東京大学、三菱商事、三菱重工業、ジャパン・マリンユナイテッド、三井造船、新日鐵住金、日立製作所、古河電気工業、清水建設、みずほ情報総研といった組織が名を連ねている。

 福島の沖合に3つの異なる浮体式の発電機を展開する計画で、政府からの支出もおよそ240億円にも上る。2018年の完全な商業化を見込んでいる。
 
 日本では天災などのリスクもあるが、台風や津波を想定したシミュレーションもすでに実施済みだという。

 洋上風力に目をつけているのはメーカーや商社ばかりではない。金融機関のゴールドマンサックスもその有望性に着目し、発電事業を具現化するジャパン・リニューアブル・エネジー社を設立。ブルームバーグによると、この5年でクリーンエネルギーに500億円を投資するという。

 浮体式洋上風力発電のマーケットは日本や米国の沖合、北海、地中海などとてつもなく大きい。輸出に強い日本はアジアや米国、欧州などの潜在的な市場に着目するのを得意としてきた。米国の沖合も深海のリソースに恵まれていることから、日本がこの市場に乗り出すのも時間の問題かもしれない。すでに三菱重工業などは欧州の浮体式風力の市場に進出しようとしてきた。

【今後注目すべきポイント】
 再生可能エネルギーは割高なことで知られており、浮体式洋上風力発電が商業化されたとき、実際に国民がこの電力を購入するかどうかが焦点となる。環境先進国ドイツでも固定価格買い取り制度(FIT)が2000年から導入されているが、一般家庭向けの電力料金に賦課金が反映されている。1kw時あたり6.2セント(約8.3円)が割高であるとし、電力会社からもFIT廃止の声が上がっている。

 なお、日本では洋上風力向けのFITは2014年に設定されるとのことだ。

Text by NewSphere 編集部