アフリカにおける起業活動拡大を阻む障壁 革新的技術によって緩和されるのか

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著:Prince C. Oguguoグルノーブル・エコール・ド・マネジメント、Doctoral Researcher, Strategy, Collective Action & Technology)

「グローバル・アントレプレナーシップ・モニター」が発表した2018-2019年版の報告書によると、アンゴラやマダガスカルをはじめとするアフリカ諸国の起業件数は、世界でトップレベルであることが示されている。しかしながら、この地域の起業家たちは個人的にごく小規模の経営を行っていることが多く、社会経済活動への貢献度は極めて低い。これはもったいないことだ。南アフリカを除くサハラ以南のアフリカ諸国では、大企業によって市場が独占されている産業はあまりない。先進国の企業にありがちな起業家を遠ざける傾向が見受けられないため、大きな成長を遂げる機会を得ているのだ。

 これらの国において他国からの多国籍企業がGDP(国内総生産)の増加に果たす(またはすでに担っている)役割は大きいものの、その収益は自国に還元されるため、GNI(国民総所得)への貢献度は著しく少ない。さらに、このような多国籍企業はたいていの場合、自国で開発した製品や製造工程を用いて利益を容易に獲得できるような、より大規模で確立された市場を好む。したがってアフリカの大都市に住む人々にとっては、先進国で利用できるものとほぼ同じような製品やサービスが身近になる。一方、大都市を離れると商業機能が衰退したなかに住民たちが取り残されているのが現状だ。

 それゆえ、地域社会を基盤とする起業活動がアフリカ経済にもたらす利点は少なくとも3点はある。

・収益の大部分は、地域社会内で留保され再投資に利用される。

・地域社会に根ざした起業家は、文化的また経済的に、そしてインフラにおいて複雑な環境を伴っていても、比較的容易にかじ取りが可能である。その結果、十分なサービスを得られていない地域における経済活動や社会的な利益に貢献している。

・起業活動によって、個人レベルでの健康状態や仕事への満足感、全体的な幸福度が高まると考えられている。

 このような潜在的な利点を考慮すると、アフリカ諸国において起業活動が衰退の一途をたどっていることは大変残念である。研究者はその背景として、よくある定番の要素、つまり不十分なインフラ整備、教育水準の低さ、そして深刻な政治的腐敗が関係していると示してきた。

◆先端技術は救いの手となるのか?
 実用的、もっと言えば起こり得ると考えられていることが、革新的技術によって覆されることはよくある。それを抑止することで、アフリカで最も解決困難とされる問題も解決策が見出せるかもしれない。

 ここでは、ブロックチェーン、ドローン、そしてAI(人工知能)の3点を例に挙げ、それらが内包する膨大な可能性について言及する。ブロックチェーン技術による分散型台帳システムを利用することで、一定の汚職を減らすことができるかもしれない。ある地域の企業を対象に行った調査では、企業が抱える重要課題として、官僚への「非公式な納付金」が多く挙げられた。企業と政府間の関係性がより透明化されるのであればどんな側面であれ、地域の起業家からは好意的に受け止められるだろう。

 ブロックチェーンを用いて政府の透明性を高めることは斬新なアイディアではない。カナダ政府はイーサリアムのブロックチェーン台帳を導入し、研究への資金提供について情報共有を始めている。同様に、企業と政府間の取引についてもブロックチェーンを介して管理が可能だ。奮闘する起業家を冷遇することにもなりかねない裏取引を防止し、政府機関の透明性と全面的な信頼を向上させる。

 ドローンなどの無人機は、電子取引や他ビジネスにおける物流上の課題が解決できるかもしれない。ルワンダにおける血液輸送への利用が一例であるが、ドローンの導入により、険しい地形や輸送インフラの欠如による影響が最小限に抑えられている。不足するインフラについて根本的な対策を講じるものではないが、同様の課題を抱える他の産業や近隣の国において、このシステムが政策支援を通してどのように活用できるかは明確である。

 先端技術が秘める可能性としてさらに、人工知能(AI)を例に挙げる。世界レベルの授業を生徒の強みとニーズに適応させることで、アフリカ諸国の中でも辺境の地に住む人々がAIを使って高等教育を受けることが可能になるかもしれない。AIにかかる追加費用はごく少額であり、ニジェール・デルタに住む起業家に経済的に依存することになったとしても大きな問題ではない。

◆先端技術をアフリカで活用すること
 アフリカにおける起業活動を拡大させるための糸口として、かつて非現実的であるとされたこのような技術が解決策として提案されている。しかしその解決策も、基盤となる技術を広く最適に適用するための政策が講じられなければ、目標は達成されないままだろう。アフリカ大陸での起業について政策立案者がその意味を定義し直すには、発足したばかりの「アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)」が時宜を得た機会となる。アフリカで高い能力を秘める起業家を育成するためには一貫した取り組みが必要であり、下記のような考察が首脳陣には求められる。

・創設されたばかりのAfCFTA内の物流を円滑に稼働させるため、起業家は無人機やブロックチェーン技術をどのように活用できるのか。

・アフリカ連合、また政府の政策立案者が担う役割とは。

・アフリカの公的支援にとって極めて有望なベンチャー企業を特定するために、ビッグデータやAIをどのように活用できるか。

・民間セクターの発展や、医療や教育など優先度の高い部門に関わる革新的技術の商用化に向けた支援について、アフリカ開発銀行が貢献できる任務には何があるのか。

 この大きな潮流の中にアフリカを導くには、今日の知識基盤型経済の好機と課題に焦点を置いたリーダーシップ、そして適切な答えを導き、地域社会から国家、アフリカ全土に対して実行力を発揮するような指導者が求められるだろう。

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by Mana Ishizuki

The Conversation

Text by The Conversation