海外が報じた日本(2013年6月)

1.サマリー
 6月、海外各紙の日本報道は前月に比べて少なかった。外交に関して大きなトピックがなく、日銀の緩和策も「現状維持」であり、アベノミクスの「成長戦略」もインパクトに欠けたためといえる。

2.日本の経済
 安倍政権が掲げる構造改革の内容が、過去の歴代政権からの流用であり、今回に限って成功するとは言いがたいと指摘されている。
 また、 1960年代に池田勇人内閣の所得倍増計画が成功して以降、日本経済は成熟し、その成長は鈍化を免れていないと解説されている。
 安倍首相が手本にした小泉改革にしても、例えば郵便局の郵便事業自由化は、「全国に少なくとも10万のポストを設置し、それらのすべてから少なくとも週6日収集する」という厳しい参入条件のため事実上無意味であり、「路傍に打ち捨てられている」と評された。
 今回安倍内閣が打ち出した「薬のインターネット販売自由化」についても、薬剤師団体からの反発を受けて、当の自民党内から反対が出ており、来月の参院選を前にして既に規制維持に傾いていると指摘されている。

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3.日本のビジネス
【ソフトバンク、米携帯大手スプリントを買収】
 米携帯電話3位のスプリント・ネクステルの臨時株主総会は、ソフトバンクによる買収計画を賛成多数で承認した。米連邦通信委員会(FCC)による最終承認を待って、7月上旬に取引を完了する見込みだ。ソフトバンクは、8ヶ月にわたる米衛星放送会社ディッシュ・ネットワークとの争奪戦を制した。

 米携帯電話業界にはAT&Tとベライゾンの大手2強が存在する。
 ニューヨーク・タイムズ紙は、この買収により日本のソフトバンクが米携帯電話業界の再編で大きな役割を担うこととなると報じた。
 一方、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は両社への挑戦は容易でないとした。大手2強ははるかに大きな顧客基盤とネットワークを持つ。
 ただ、大手2強が無制限データプランを廃止する中、孫氏は、スプリントが無制限データプランを継続することを宣言した。この点で米市場において優位に立つ可能性を秘めている。

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4.その他
 原発の新規制基準に対して、国内外からその意義が問われているようだ。新基準は、2011年の福島第1原発事故の教訓を取り入れ、防潮堤の設置・強化などの自然災害対策や、テロも想定した緊急時制御室の設置、事故時に放出する放射性物質を減少させ原子炉格納容器の圧力を下げる「フィルター付きベント設備」の設置などを義務付けている。
 7月8日に施行され、電力会社からの再稼働に向けた適合性審査の申請を受け付ける予定だ。

 フィナンシャル・タイムズ紙は、新規制基準の発表会場にて「国民の声に耳を向けろ」や「再稼働反対」と叫ぶ声がたびたび飛び交ったと報じている。 福島原発事故の恐怖が人々の記憶にまだ強く残っているうちから、政府が積極的に原発再稼働に向けて動き出すことは、逆に不安を募らせかねないと指摘している。
 各紙とも、国内で実施された世論調査で半数以上が原発に反対しており、賛成派は30%であったと報じている。

 国内にある原発は50基で、48基が安全確認のため停止中だ。唯一稼働している大飯原発の2基は、点検が予定されている9月まで稼働する見込みで、その後は新規準の適合審査を受けなければならない。規制委員会は審査の所要期間を明確にはしていないが、6ヶ月程度と伝えられている。少ない審査チームで実施することや、基準を満たすためには大規模な設備投資が必要であることなどから、新基準が施行されてもすぐに再稼働とはならない見込みだ。

「原発再稼働への国民の声は?」海外紙の批判

Text by NewSphere 編集部