海外が報じた日本 10月15日~10月21日

1.サマリー
 10月3週目、日本の政治・経済についての主な記事は29記事。前週より10記事ほど減った。
 外交については引き続き日中の緊張関係が中心だ。経済については、日銀の追加緩和や、ミャンマー・トルコへの投資など積極策が注目された。企業のニュースについては、ソフトバンクのスプリント買収が大きく取り上げられた。また、沖縄で米兵による暴行事件が発生したことも報じられた。

2.日本の外交
<日中関係>
 戦艦を含む中国船が、日本領海のすぐ外にある接続水域を航行するなど、依然両国間の緊張関係が続いている。両国間の不和が経済へ与える悪影響も明らかになっている。一方、局長級の会談が開かれ、関係改善への期待が高まっている一面もある。
 Financial Timesは、中国の強硬姿勢を取り上げた。日本に対しては未だに強固な姿勢を崩さず、ここ2週間毎日のように尖閣諸島近海に船を送り出しており、接続水域に戦艦を送るなど一歩も引かぬ姿勢を見せている。さらにアメリカに対して、日本との問題に首を突っ込まぬように警告した。
中国国内では今後の方針についての議論がなされている。資源などの発展材料になるものの取得に専念すべきという意見と、国内の発展に集中するべきだとする意見があるようだ。外務省に新たなポストを追加して、外交力を増強する動きを見せていることも指摘した。
 The Wall Street Journalは、2国間の不和が与える世界経済への影響に焦点を当て、現状を報じた。専門家は、中国は多くの製品を組み立て輸出しているが、その部品の多くは日本から輸入しているため、両者の貿易の停滞は製品価格の高騰を招くと分析した。
 また日本は初めて経済が中国によって被害を受けていることを示唆した。エコノミストは、中国にも同じような被害が出ることが予想され、特に雇用の減少がすぐに起こると指摘した。日本の会社に雇われている中国人は500万人以上と推測されているため、影響は大きい。
 The New York Timesは、日本外務省の杉山アジア大洋州局長と中国外務省の羅アジア局長が東京で会談を開いた。政府の発表によれば、会談では尖閣諸島の問題に関する簡単な意見交換が行われ、さらに高次の会議に向けての予備会議となった、と報告した。
藤村官房長官は関係修復の重要性に言及している。この考えは中国も同じようで、国内でのデモや暴動を抑える目的もあったのではないかとの分析もある。いずれにしても、今回の会議が今後の緊張緩和につながる次なる会議の第一歩となったと報じた。

3.日本のビジネス
<ソフトバンク、スプリント買収>
 ソフトバンクは15日、約201億ドル(約1.6兆円)で米携帯3位のスプリント・ネクステルを買収すると発表した。日米の契約数を合わせると約9600万件に拡大し、アメリカ首位のベライゾン、2位のAT&Tに迫る。
 Financial Timesは、孫社長の自信にあふれたコメントを掲載した。日本でボーダフォン買収後、V字回復を成し遂げたことを紹介。業界慣行を破る価格戦略、斬新なプロモーション戦略、そしてiPhoneを初めて発売するという商品戦略を評価した。孫社長が、アメリカのネットワーク速度の遅さを指摘し、日本の経験を生かし競争力を強化すると自信を示していることを取り上げた。
 一方、ベライゾンが32%、AT&Tが30%を占める米携帯市場では、ソフトバンクの買収によりスプリントの16%のシェアは強化されないと指摘した。また、孫社長の強気の姿勢に反し、投資家は難色を示していると報じた。「この相乗効果が形になるまで数年かかる」という東京のアナリストのコメントも紹介している。
 The New York Timesは、孫社長の最大の賭けと紹介した。孫氏の目的は「最大・最速のワイヤレスネットワークをアメリカで構築すること」である。スプリントのヘッセCEOが、ソフトバンクはスプリントにお金よりもさらに多くのもの、実績を持つリーダーの専門知識の恩恵をもたらすとコメントしていることも取り上げた。リスクとして、スプリントは次世代ネットワークLTEを展開し始めたばかりとも指摘している。
 The Wall Street Journalは批判的に報じた。スプリントは長年国内ライバルと合併すると思われていたが、多額の負債を持ち、米市場での経験のない日本からの求婚者に「身売り」したと批判的に報じた。また、孫氏の「これは私のナンバーワンになろうとする男のエゴの一部だ」というコメントを取り上げた。ヘッセ氏は新会社でCEOにとどまるだろうが、孫氏が主導権を握ることに疑問の余地はないとも指摘している。

4.日本の政治
靖国神社<安倍自民総裁、靖国参拝>
 日本の安倍晋三自民党総裁が17日、靖国神社に参拝した。 安倍総裁は一般にタカ派と評されるが、2006年の総理大臣就任時は、中・韓との関係改善に腐心した実績もある。今年9月、自民党の総裁に選出され、「近いうち」に行われるとされる総選挙で自民党が政権奪回を果たせば再び総理大臣に返り咲くことから、言動が耳目を集めていた。
 Financial Timesは、安倍総裁を国家主義的と評し、その由縁を紹介した。 今回の一件を、新華社通信が「日本の右傾化という国際世論を裏付けるもので、軍国主義の再来すらあながち杞憂とはいえない」と報道したことを伝えた。さらに、次の総選挙で自民党に勝算ありとした上で、総理に返り咲いた安倍総裁が靖国参拝を強行する可能性を示唆した。
 The New York Timesは、タカ派として知られる安倍氏が、自民党総裁に選出後初めて靖国神社に参拝したことで、今後の日本の右傾化が懸念されるとした。領土問題で関係が悪化している中・韓のみならず、協定によって防衛義務のある米国も憂慮しているところ。ただし個人的信念はさておき、「実務家」と評される安倍氏の人柄を紹介し、 過去の言動からも、総理に就任した場合の行動はさほど過激化しないという見方も強いとした。
 結局問題は、日本国民が、安倍氏の右傾的姿勢をどの程度支持するかだと分析。その点、中国の圧力が強まらないかぎり、右傾化の可能性は低い。国民の懸念はむしろ、安倍氏がまた中途半端に職務を投げ出すことにあるとし、安倍氏への支持率の低さを現状として報道した。

5.その他
<沖縄 米兵による暴行事件>
 沖縄県警は16日、20代女性に性的暴行を加えたとして米海兵2人を逮捕した。なお、両容疑者とも在沖縄米軍の所属ではない。仲井真沖縄県知事は衝撃と怒りを感じ許しがたい犯罪と述べ、沖縄の米軍基地、アメリカ大使館、首相官邸を訪れ抗議した。ルース駐日大使は米国政府として極めて遺憾であり事件を深刻に受け止めている、引き続き最大の関心を持って見守ると述べた。
 The New York Timesは、反米感情の増大を懸念している。3年前、鳩山元首相が米軍普天間基地を県外移転するという約束を破って以来、県民の不満は募っていたと指摘。さらに、オスプレイ配備への反対運動が起きている中での事件であり、県民の抗議が一層強まるのではないかと報じている。
 The Wall Street Journalは、アメリカと同盟国間の軍事協力強化を脅かすものと報じた。95年に米兵による少女暴行事件が起きた際は、大規模な反米運動が展開され、基地縮小に至った。日米関係の悪化を懸念し、アメリカは迅速に対応。ルース大使は政府が今回の事件を極めて遺憾に思うとの声明を出し、捜査に全面協力すると述べた。
日本は中国との尖閣諸島を巡る領土問題の過熱から米軍の援護を必要とし、アメリカは、中国への牽制をかねて太平洋に防衛拠点を移している。そのため沖縄は双方にとって重要な拠点である。
 なお、現在の日米地位協定では、米兵の日本人への犯罪で起訴が可能である。アメリカ側は同協定を遵守し、海軍犯罪捜査機関でも同時進行で捜査すると述べた。

Text by NewSphere 編集部