健康的な血圧とは?

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著:Sandra Jonesハル大学、Senior Lecturer in Biomedical Science)、Matthew Lancasterリーズ大学、Associate Professor in Biological Sciences)

イギリスでは、700万人強の人が高血圧であるとされる。高血圧は心臓血管疾患のほか、死因の25%を占める心臓発作や脳卒中など心血管系の病気の主要な原因でもある。自覚症状がないため、560万人ものイギリス人は高血圧であることを意識していない一方で、息切れ、慢性的な頭痛、目のかすみ、鼻血といった症状を訴える人もいる。では血圧とは何か、なぜそれほど重要なのか。

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心臓は、こぶしほどの大きさをしたポンプのような器官である。心筋が収縮する力で血管内の圧力が上昇すると、血液が全身に送られる。血流は動脈を通って臓器に酸素や栄養を供給するほか、静脈では老廃物を除去する働きもしている。血圧が高くなりすぎて血管に損傷を与え、心臓への負荷が大きくなると問題が起きる。

血圧測定には上腕にカフを巻き自動測定器が使用されるが、医師によっては聴診器と血圧計を使った計測を好む人もいる。イギリスでの血圧の正常値は約120/70mmHgとされる(mmHgは水銀の高さを表す)。数字の大きい方(最高血圧)は心臓が収縮して血液を動脈に押し出すときの収縮期血圧、小さい方(最低血圧)は心臓が膨らんだときの拡張期血圧である。だが、健康的な血圧値の範囲は国によって異なる。たとえばアメリカでは、かつて140/90mmHg以上が高血圧とみなされていたが、2017年に130/80mmHg以上へと基準値が変更された

◆加齢の影響
多くの人は齢を重ねるにつれて血圧が上昇する傾向があり、医療の現場では高血圧症と呼ばれている。加齢とともに肌の伸縮性が失われ、しわが増えるのは誰もが知っているところだ。同様に血管も老化により弾力性が失われ、いわゆる動脈硬化をもたらす。時間の経過とともに血管の内膜に脂肪物質がたまると症状が悪化することがあり、これはアテローム(粥状)硬化と呼ばれている。こうした物質の蓄積は、動脈硬化の過程で数年にわたって続く。血管の損傷部分から発生した小さな病変が大きなプラークになり、最終的には血管内の容積が減少して血流が制限されてしまう。

どの血管でも閉塞が起きる可能性があるため、急性または慢性の疾患を発症する恐れがある。心筋に酸素を供給している冠動脈で閉塞が発生すると心臓発作や胸痛として知られる狭心症を引き起こす。ところが首にある動脈(頸動脈)が詰まると、脳への血流が悪くなり脳卒中を引き起こす。

◆高い測定値
イギリスでは、NHS(国民保健サービス)の医療機関においてNICE(国立医療技術評価機構)が定める公式ガイドラインに基づく血圧分類がなされている。1回目の測定値が140/90mmHg以上の場合、あと2回測定を行う。3回の測定値に相当の開きがある場合は低い方の値が記録される。140/90mmHg以上は高血圧と診断される。

高血圧にはさまざまな段階があり、NICEは「医療血圧が140/90mmHg以上のときをステージ1高血圧、160/100mmHg以上のときをステージ2高血圧とする。医療機関での収縮期血圧が180mmHg以上、または拡張期血圧が110mmHg以上のときを重度の高血圧とする」と述べている

ところが、米国心臓病学会(ACC)と国の諮問機関であるアメリカ心臓協会(AHA)は診断基準を大幅に引き下げ、現在では収縮期血圧130mmHg以上をステージ1高血圧、140mmHg以上をステージ2高血圧としている。新基準を当てはめるとアメリカの成人の46%以上が高血圧に該当することになり、45歳以上の人に限ると高血圧の診断が男性で3倍、女性で2倍に増えるとみられる。

◆危険因子
高血圧を判定する基準値の引き下げはイギリスでも議論されている。心血管疾患に関する個々人のリスクを予測するのに、高血圧は重要な要因であるからだ。

危険因子のなかには年齢、人種、性別、家族歴、遺伝など変更できない要素もあれば、血圧、血中コレステロール、体重と身長から算出されるBMI(ボディマス指数)のほか、食事、運動、喫煙、飲酒といったライフスタイルの選択など改善できる要素もある。

何らかの心血管系の危険因子を持つ人や腎臓病の既往歴がある人、アメリカの最新ガイドラインに沿って降圧剤を使用していた年齢50歳以上の9361人を対象として、SPRINT(収縮期血圧介入治験)と呼ばれる臨床試験が行われた。

SPRINT試験の結果、目標値120mmHgを目指して集中治療を受けた人は140mmHgを目指して治療を受けた人と比較して、6年間の追跡期間中の相対的な死亡リスクが25%減少した。安静時血圧を120mmHg以下にすることの有効性が明らかになり、フォローアップで脳卒中や心筋梗塞など心血管疾患を引き起こす相対リスクが30%低下することが示されたため、治験は予定より早く終了した。

そのため、イギリスでは120/70mmHgという標準血圧の維持を国民の目標とすべきという議論がある。

This article was originally published on The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.
Translated by Conyac

The Conversation

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