11日間眠らなかった17歳の少年 仰天の実験と、後年語った後悔

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 人生の3分の1は、寝ている時間が占めるともいわれる。その時間を思い切って取り払うことができれば、活動の幅はずいぶんと広がるのだろうか? 結果は正反対のようだ。高校時代に11日間の不眠記録を生み出したアメリカの青年は、その後の人生に大きな悔いを残すこととなった。

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◆科学展の賞をねらって
 1963年の冬、当時アメリカ・カリフォルニア州に住む高校生だったランディー・ガートナー君は、科学展への出展に情熱を燃やしていた。そこで、優勝間違いなしの絶好のアイデアを思いつく。人はどれだけ連続で起きていられるのかを、自らが実験台となり検証するのだ。当時この疑問は世間を賑わせていたが、決定的な答えは出ていなかった。

 冬休みが訪れるとランディー君はいよいよ実験に乗り出す。野心的な計画だが、英BBCによると、ちょっとした不手際もあったようだ。友人に行動の記録を頼んでいたが、1名しか用意しておらず、モニタリング担当であるはずの友人も一緒に不眠を迫られることとなった。3日目になると友人は、気がつくと壁にもたれながら壁に直に研究メモを取っていたという。急遽もう一人の友人が駆けつけた。

 こうして行われた不眠実験では、能力の低下と向上の両方が観察された。米ディスカバリー誌によると、開始から2日経った時点でランディー君は、舌打ちを繰り返すかんたんなテストに失敗するようになった。触覚に頼って物体を区別することができなくなる一方、嗅覚は鋭くなり、強い匂いに対して過敏になっている。5日目に入ると幻覚が見えはじめ、短期記憶は著しい低下をみせた。反面、予想を裏切るかのように運動能力は向上し、バスケットボールで次第に良いスコアを記録するようになっている。

◆高校生のプロジェクトに全米が関心
 打ち立てた不眠記録は、世界最長となる丸11日間と25分であった。自由研究として始めたこの実験は、興味を引かれたスタンフォード大学の睡眠学者が現場に駆けつけるほどの大ごととなった。最終的にランディー君は、海軍病院で脳波の測定を受けながら眠りについている。近年、本人が米公共ラジオのNPR(2017年12月27日)に出演し、14時間たっぷりと眠ったあとは、当時としては別段の不調は感じなかったと語っている。

 冬休みのプロジェクトとして行われたこの実験は、サンディエゴ圏の科学展に出展されると、みごと最優秀賞に選ばれた。学業の範囲を超えて全米でも注目を集めており、ディスカバリー誌は、ケネディ大統領の暗殺とビートルズのアメリカ訪問に続き、当時全米で第3位の注目トピックになったと伝えている。11日間(正確には264.4時間)という不眠記録が認められ、ギネスブックにも掲載された。テレビのクイズ番組にも出演するなど、ランディー君はすっかり時の人となった。

◆「生き様はひどいものだった」 半世紀後の後悔
 およそ60年前に打ち立てられたランディー君のギネス記録は、現在でも破られていない。しかし、それには理由がある。ランディー君が実験後に後遺症に悩まされるようになったことから、ギネス側は危険だと判断して不眠記録の新規受付を中止したのだ。

 NPRラジオに出演した本人は、この実験が原因でその後の人生で不眠に見舞われることになったと後悔を口にしている。「(2017年の出演時点から)およそ10年前、眠ることをやめました。眠れなくなったのです」「生き様はひどいものでした。すべてに苛立ちを感じました。50年前に行ったことが、まだ続いているかのようでした」。現在では改善しているものの、それでも6時間以上眠ることはできないという。

 BBCは、実は不眠実験の直後、ランディー君の睡眠パターンに異常が生じていたと報じている。海軍病院でのモニタリング結果を分析したところ、不眠明けの初日夜にはレム睡眠の割合が異常に大きく、翌夜には逆に顕著に低下していた。全体を通じて仮眠にも似た状態を示しており、一部が活動を停止し、一部は覚醒している状態にあったという。

 当時は不眠に耐えているつもりでも、ひどい後遺症に悩まされる場合があるようだ。

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Text by 青葉やまと