緑が多いほどよく眠れる? 樹木が睡眠にもたらす効能とは

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著:Thomas Astell-Burtウーロンゴン大学、Professor of Population Health and Environmental Data Science, NHMRC Boosting Dementia Research Leadership Fellow)、Xiaoqi Fengニュー・サウス・ウェールズ大学、Associate Professor in Urban Health and Environment; NHMRC Career Development Fellow)

「最近なんだかスッキリしない」、あるいは「どうも集中力が続かない」という方はいないだろうか。オーストラリアでは、成人の12%~19%が日常的に睡眠不足に陥っているという(睡眠不足とは、睡眠時間が5時間半~6時間未満の人を指す)。

しかし、家の近所にどれだけ樹木が生えているかによって睡眠時間が変化するようだ。我々が最新の調査を実施したところ、緑の多い地域に住んでいる人の方が、そうでない人よりも十分な睡眠がとれている傾向にあるとわかったのだ。

確かに、インターネット上には睡眠改善に役立つアドバイスがあふれている。個人的な習慣だけでなく、睡眠に悪影響を与えるものも多い。航空機交通騒音のほか、気温人工光大気汚染といった環境要因も睡眠を阻害する要因だ。

さらに年齢や職業、社会的あるいは経済的状況といった複数の要因も絡み合っており、質の良い睡眠を得られるチャンスは人々の間に不均衡に点在している。したがって単に個人の自己責任や、より多くの睡眠を取ることを選択する、といった問題ではないのだ。

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◆緑地が健康を改善する理由は?
我々は長年にわたって緑地が健康にもたらすメリットを研究してきた。そして最近発表した研究では、より多くの緑地、特に樹冠(上部で葉が生い茂る高い樹木)が多ければ多いほど、2型糖尿病などの心血管代謝疾患のレベル減少に役立つ可能性があることがわかった。

なぜ緑地が健康に良いのだろうか?我々はある仮説を立てた。それは、「公園や森林など緑地が近隣にあることで、実際に睡眠が改善される」というものだ。緑地が騒音大気汚染の影響を阻み、周囲のヒートアイランド現象を冷却する可能性がある。いずれも、睡眠を阻害する要因となるものだ。

こうした恩恵はとりわけ、経済的に恵まれない地域にとって特に重要だ。エアコンを持てない家庭が多く、健康状態が根本的に脆弱になりがちだからだ。

自然に触れることで、心理的回復とストレス軽減の機会を得ることにもなる。多くの木が生い茂り生物多様性(鳥類の多様性など)が豊富であるほど、そのメリットは大きくなるとみられる。

初期の研究結果は、オーストラリアの緑地と睡眠時間の関連性に関するエビデンスを提示するものだったが、その後、さまざまな国で多くの研究が同様の結果を報告している。

重要なのは、こうしたエビデンスのほとんどが、「横断研究」から得られたということだ。横断研究は特定時点でのスナップ写真のようなもので、1枚の写真から原因と結果を理解しようとする研究スタイルだ。

この場合、「ニワトリが先か?卵が先か?」の理論が立ちはだかることになる。つまり、緑地があるからよく眠れるのか?それとも、睡眠がしっかりとれている人は健康上の問題や経済的問題が少ないため、緑豊かな地域に住む傾向があるのだろうか?ということだ。

◆我々の研究が斬新な理由
我々の新しい縦断的研究はこの問題と対峙するべく、「家から1.6 km以内に多くの緑地がある人ほど睡眠不足になる確率が低いのか」ということを約6年間にわたって調査した。この間、転居した対象者は含まれていない。

「住宅から半径1.6km以内に占める、樹冠を含む緑地の割合」を基準に調査したところ、30%以上の地域の人々は、10%未満の地域と比べ、睡眠不足の発症率が13%低いことがわかった。さらに、年齢や性別、教育、就労状況、婚姻状況、そして世帯収入など、「睡眠」と「緑地へのアクセス」に作用する可能性のある要因を考慮しても、結果は変わらなかった。

今回の調査結果により、緑地が睡眠に与える影響を示すエビデンスの質が高まることになるが、それだけでは不十分だ、重要なのは、睡眠時間は「健康的」であっても、睡眠障害といった「睡眠の質」の問題を経験する人もいるからだ。我々のエビデンスは、樹冠が多いほど健康的な睡眠時間確保をサポートする可能性があると示唆しているが、今後の研究では、緑地が睡眠の質の向上をサポートするかどうか評価していく。

◆樹冠と睡眠の相関関係が重要な理由
世界中の科学者が、「睡眠不足は健康悪化や生産性の低下を引き起こす」と気づいている。

オーストラリア人の10人に4人が何らかの睡眠問題を抱えているとされ、2016年から2017年にかけて健康不良による損失が401億豪ドル(約2.7兆円)、医療システムや生産性対策、介護などにかかるコストは262億豪ドル(約1.7兆円)にのぼると推定されている。

したがって、公共政策によって都市環境を再形成し、市民の睡眠が改善すれば、社会や経済に重要な結果をもたらす可能性がある。

緑地が健康に良いと認識している人は多いが、睡眠との関連性は見落とされている。たとえば、オーストラリアで2018年に実施された睡眠健康意識調査では、睡眠に影響を与える多くの要因が説明されていたものの、緑地はその中に含まれていなかった。

◆結論
緑地は、都市での貴重な自然資本の供給源だ。しかし、それがいかに健康に良いかをすべてわかった気になるのは危険だ。緑地自体が過小評価されてしまう恐れがある。常識的な知識だけでは説明できない研究結果もある。たとえば、イギリスで実施された調査では、緑地が糖尿病リスクを下げることが、「身体活動が増加したから」ではない可能性があることを示唆している。

ニューサウスウェールズ州の州首相は「良質な公園樹木の面積を増やす」という都市緑化政策を掲げており、こうした政策が健康に与える最大の効果は、「最も目に見えやすい効果」とは別物かもしれない。

また、緑が多ければ何の努力もなく健康になれる、というわけでもない。アメリカで興味深い実験的研究が行われ、「公園内で携帯電子機器を使用すると、注意力が向上するという利点を実質的に妨げる」と結論づけられている。

つまり、「自然との関わり方」がその「健康効果」と大いに関係しているということだ。そしてそれは、誰もが日常的に都市公園や森林で多くの時間を過ごせるような、公平性重視の「(専門家や医師による)自然ベースの介入」が必要だ、ということを強く伝えている。

そういうわけで、庭に出たり、森の中を散歩したり、公園でピクニックをしたり、植物園を散策したりしてみよう。そうすべき理由は、ここで取りあげた以外にもたくさんある。心地よい眠りへと導いてくれることも、あるかもしれないのだから。

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by isshi via Conyac

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