19年ぶり日本人横綱誕生、海外メディアも注目 横綱2人の休場はラッキー?

 大相撲初場所で初優勝した大関稀勢の里の横綱昇進が、1月23日に確定した。その前の日本人横綱は第66代の若乃花、そして65代の貴乃花で、若貴フィーバーを巻き起こしたのは相撲ファンでなくても記憶にあるだろう。以来、日本人の横綱は19年後の今回の第72代横綱・稀勢の里の誕生まで、武蔵丸(ハワイ)、朝青龍(モンゴル)、白鵬(モンゴル)、日馬富士(モンゴル)、鶴竜(モンゴル)と外国人力士の横綱が続いたのだ。日本の国技である相撲における19年ぶりの日本人横綱の誕生について、海外のメディアはどう伝えたのだろうか。

◆19年ぶりの日本人横綱を強調
 冒頭述べたような外国人力士が近年、相撲界のトップの座を押さえていたことを各紙は強調している。一方で、新横綱・稀勢の里の人柄に触れた記事も目立つ。ロイターは「人として尊敬される横綱になりたい」という伝達式後の発言や、長い間横綱を目前に到達できなかったプレッシャーなどについても伝えている。

 ニューヨーク・タイムズ紙は外国人力士の活躍について報じた2013年1月の記事で、ハワイ出身の大型力士に続き、自分たちの伝統的な競技の技を相撲に活かしているモンゴル出身の力士について触れ、日本の相撲は発展途上にあると論じた。当時、力士のうち3分の1が外国人で全競技者の7%を占める点について、日本の若者が厳しい相撲の修行に魅力を感じなくなっているとも指摘している。

 BBCでも稀勢の里の昇進と同時に、相撲世界の厳しい修行について述べ、過去には若い力士の暴行死亡事件まで発生し、サッカーや野球に若者の人気を奪われている現状では、名誉と慎み深さをもってスポーツ界の模範として機能するべきだと指摘した。収入の面で日本の相撲界は外国人力士にとって魅力的であるとも伝えている。

◆海老蔵ブログまで引用
 ワシントンポストは、日本人生まれの新横綱が相撲界を活性化するとの期待が高いと伝えている。優勝までに89場所という長期を要した苦労の末の快挙であること、2人のモンゴル出身の横綱が休場した後の優勝であることに触れ、さらに歌舞伎役者の市川海老蔵のブログを引用し、早すぎる横綱への昇進を心配する声もあると伝えている。本来、横綱昇進には2場所連続の優勝が条件だ。稀勢の里の前に横綱になった鶴竜(モンゴル出身)も大乃国以来27年ぶりの2場所連続優勝なしでの昇進。2人の力士ともに2場所連続優勝相当との横綱審議委員会の評価だが、今後の審査基準の変化なども気になるところだ。

◆モンゴルのメディアでは
 モンゴルのニュースを世界に配信するMONTSAME News Agencyでは稀勢の里の横綱昇進について、「4人のモンゴル人横綱の後の日本人横綱を相撲界は歓迎」という見出しで報じている。稀勢の里の写真がトップにあるものの、残りの2枚の写真は最初のモンゴル人横綱の朝青龍、そして現横綱の白鵬、日馬富士、鶴竜のものを掲載している。今回の初場所で稀勢の里は2人のモンゴル人横綱の休場が幸運だったと述べ、鶴竜に続き、2回連続の優勝を待たずに横綱昇進を果たしたと伝えている。

 若貴フィーバーの相撲ブームの後、一時はかなり下火になったが、ここ2、3年は満員御礼が出るほど相撲は人気を回復させている。ファンサービスの導入やSNSを活用した広報活動など、若者が好きな力士の試合を追えるような親しみやすいスポーツ観戦の要素も加わってきたからのようだ。

 外国人力士の強さは、厳しい修行もさることながら、日本語だけの環境と日本人になりきろうとする気概からだとも言われている。モンゴル人力士と日本人力士との体格差はほとんどないはず。稀勢の里に続く、日本人らしい粘り強さを持つ次の日本人横綱の誕生を楽しみにしたいところだ。そして相撲界が、日本の国技としての伝統を守りつつも、さらに新しい一面を見せてくれることにも期待したい。

Text by 沢 葦夫