“日本の歴史をもっと知りたくなった” 海外アーティスト作の9分間動画がネットで話題に

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 先史時代から現代まで、日本の歴史を9分間にまとめた動画が人気だ。作成したのは、ネットで音楽や動画を発表しているアーティストのビル・ワーツ氏。2日に氏のウェブサイトとYouTubeで公開された。5日現在、YouTubeでの再生回数は180万回を超えている。非常にハイテンポ、かつユーモラスにまとめられており、日本史を知らなくても楽しめるため、これまで日本史に関心のなかった人たちも多く引きつけているようだ。また、この動画をきっかけとして、さらに歴史を知りたくなったとのコメントも見られる。

◆制作日数98日間。個人制作とは思えないほどのクオリティーの高さ
 作者のワーツ氏のプロフィールは不明だが、YouTubeやVine、自身のウェブサイトなどで、これまでに多数の音楽や動画などを発表している。動画作品は、6秒間に長さが制限されるVineの規格に合った、非常に短いものが多数を占める。氏の作風はナンセンス志向が強いようだ。

 毎年、SNS上のショートコンテンツで最も影響力のある人物を選出するショーティー・アワードというイベントが行われており、ワーツ氏もある部門で候補者に選ばれているが、その部門は「Weird(奇妙)」部門である。候補者説明では、「ワーツ氏は、見る人の頭にこびりつくことを意図して、80年代にインスパイアされたアニメでキャッチーな6秒間のジングルを制作している」と紹介されている。

 今回の作品「history of japan」は、ワーツ氏にとって新境地だったようだ。大手ソーシャルニュースサイト「レディット」のあるユーザーによると、氏のこの長さの作品は初めてらしい。Q&AサイトASKfmでのワーツ氏の発言によると、制作に98日間を要したそうだ。Instagramでその作業工程表を公開している。

 ASKfmで日本をテーマに選んだ理由を尋ねられた氏は、「ウォーミングアップとして無作為に選んだ。というのも、自分は日本について何一つ知らなかったから。日本でできると分かれば、どんなテーマでもできる」と答えている。

◆面白く、日本史への興味を湧かせるもの
 この「history of japan」は、エンターテインメント性が非常に高く、かつ、日本の歴史について良い見取り図を与えている。この作品を紹介するメディアもその点を称賛している。

 解説型ニュースサイトVoxは、この動画を「最も風変りで面白い日本の歴史」と紹介する。テック系メディアサイトのギズモードのスピンオフ・ブログ「スプロイド」は、「最高に面白いやり方で説明された日本の歴史」と紹介している。

 Voxは、日本史を知らない人にとって最適、かつ面白い、というところに力点を置いて伝えている。日本は世界3位の経済大国で、ゲームから車まで、世界最高の製品をたくさん作っているが、たいていのアメリカ人は日本の興味深い歴史についてあまり知らない、とVoxは語る。ありがたいことに、ビル・ワーツ氏が、誰をも夢中にさせる、おあつらえ向きの動画を公開したが、これが非常に面白い、と語っている。

 Voxは以下のように語る。この動画は、大まかだが非常に面白く日本の歴史をたどっている。ただし全てをカバーするものではない、なにしろ、何千年分もの歴史を説明するのに9分しかないのだから。それでも、日本史の要約としてかなりよくできていて、驚くほど面白い――と面白さを非常に強調している。この動画は、風変わりではあるが、日本史へのすばらしいイントロダクションである、とVoxは語っている。

 スプロイドは、この動画が歴史への関心をそそるものだという点に焦点を当てている。この動画はとても見入らせるもので、面白くて、ペースが速かったから、日本史についてのこのすばらしい動画を早送りもせず最後まで見た、と語っている。この動画はとてもよくできていて(ふざけているけれども)、日本史についてもっと学びたいという気持ちに本当になる、と語っている。

◆楽しく歴史を学んだネットユーザーたちの感想
 レディットのユーザーたちも、楽しく歴史が学べた、歴史が興味深いものだと分かった、といった感想を記している。

・歴史を学んだのにちっとも苦痛じゃなかった!
・高校の歴史の授業はほとんど寝て過ごした。(でも)歴史は実に興味深いものだということが分かった。
・この動画、もっと学びたいと思わせるような仕方に本当によくまとまっている。
・これまで自分が見た中で、最も見入らせる歴史動画だった。

 また、日本史について理解を深める機会にもなっているようだ。あるユーザーが、元寇のシーンでモンゴル軍が竜巻でやられているのはどういうことかと質問したことから始まり、他のユーザーたちが、それは台風で、「神風」という言葉の由来になったことや、第2次世界大戦までこの言葉が受け継がれたことなどを説明している。

(※以下、重要な「ネタバレ」を含みます。動画をご覧になった後、お読みいただくことをお勧めします)

◆唯一の沈黙
 早口のナレーションがずっと続くこの動画中、一箇所だけ、数秒間の沈黙が訪れる場所がある。広島と長崎に原爆が投下されるシーンだ。そこまでの展開が軽口交じりに語られていただけに、その沈黙はレディットのユーザーの何人かに強い印象を残したようだ。

・アメリカは原爆がちゃんと機能するかどうかを知りたがっていたので日本に投下した、というところで自分は2秒ほど声を出して笑ったけれど、そのあと自分が何を笑っているのかに気づいた。
・あれほど矢継ぎ早の説明の後で、2発の原爆が投下されたときのあの意図的な沈黙、見事だ。
・同意。あれのせいで自分は「ちくしょう、2つの都市を丸々、原爆で破壊しやがった」と思った。もちろん、事実としてはすでに知っていた。けれどもあの沈黙のせいで、そのことについてじっくりと考えさせられた。

Text by 田所秀徳