世界の食料価格高騰 ロシアの穀物合意離脱とインドのコメ輸出制限受け

Anupam Nath / AP Photo

 ロシアはウクライナの穀物輸出を認めることについて、戦時下に締結された合意からの離脱を表明。またインドは、コメの輸出に一部制限を設けた。国連食糧農業機関(FAO)は8月4日、これを受け、コメや植物油をはじめとする食料品の国際価格が上昇したと発表した。

 一般的に売買される食料品について、国際価格の月ごとの変化を示すFAO食料価格指数は、コメと植物油の価格高騰を受け、6月から7月にかけ1.3%上昇した。指数が上昇したのは、砂糖の値上がりにより1年ぶりにわずかに上昇した4月以来だ。

 ロシアによるウクライナ侵攻の影響で、モノの価格は昨年記録的な高さに達し、その後は下降を続けている。しかしロシアとウクライナは小麦、大麦、ヒマワリ油など手ごろな価格の食料品の輸出大国であるため、両国からの輸出が途絶えたことで、世界的に食料危機が悪化。主な輸出先であるアフリカ、中東、アジアの一部の国々では、何百万人もが飢餓に苦しんでいる。

 モノの価格の高騰により、輸入に依存する発展途上国ではインフレや貧困、食料不安が深刻化した。そして世界はまだ、これを克服しきれていない。

 ロシアは7月中旬、国連とトルコが仲介した、黒海を渡ってウクライナの農産物を輸送する船を保護することを定めた合意からの離脱を表明しており、今では新たなリスクも生まれた。ロシアがウクライナの港湾や穀物貯蔵施設を攻撃したことを受け、世界市場では小麦とトウモロコシの価格が乱高下している。

 FAOのチーフエコノミストを務めるマッシモ・トレロ氏によると、小麦の国際価格は6月から7月にかけ1.6%上昇しており、9ヶ月ぶりの値上がりとなった。

 さらに事態を厄介にしているのが、インドがバスマティ米以外の白米の輸出を禁止したことで、世界の一部の地域で穀物の買い占めが発生している。この制限措置が先月末に取られた理由は、エルニーニョ現象が予想より早く発生した影響で、アジアの一部地域でより高温で乾燥した天候となり、コメへの被害が案じられたためだ。

 FAOはコメの価格について、7月には前月から2.8%上昇しており、今年を通しては19.7%の上昇と、2011年9月以来最も高い水準に達したとしている。FAOは声明でコメの価格高騰について「世界各国の幅広い層、なかでも最貧困層の、収入に占める食費の割合が高い人たちにとっては、食料安全保障上の深刻な懸念につながる恐れがある」と述べている。

 トレロ氏は取材に対し「サハラ砂漠以南のアフリカはコメの主要輸入国であるため、特に困難な状況が危惧される」と述べている。

 さらに急激な変化を見せたのが、植物油の価格の上がり方だ。FAOの記録によると、それは7ヶ月連続で下降していたところ、6月から7月の間に12.1%も跳ね上がった。FAOはヒマワリ油の価格が15%急騰していることを指摘し、穀物合意の終了を受け、供給量について「懸念が再発した」ことが原因だとしている。

 トレロ氏は「世界的に食料の供給量は十分といえる一方で、紛争を機に主要生産国からの供給が難しくなっていることに加え、輸出制限や気候による品不足もあり、各地で需給のアンバランスが生じる恐れがあります」と話す。これは「価格の高騰と潜在的な食料不安からくる食料不足」を引き起こしかねない。

 同氏はまた、食料の国際価格が、市場や食料品店で買い物するときの値段とは違うことを指摘している。世界市場における価格は昨年以降急落しているにもかかわらず、家庭にはまだその恩恵が届かない。

 各地の食料価格を見てみると、発展途上国の多くではまだ上昇が続いている。途上国の通貨が、穀物や植物油の購入に使うドルに対して弱いためだ。

 トレロ氏は「コモディティ価格が下落すると、輸送や、パンなどほかの商品の製造といった諸要素を含め、最終的な消費者価格に波及するが、発展途上国ではまだ起きていません。食料品価格が再び上昇すると、この波及が起こらない状況が思った以上に長引く恐れがあります」と述べている。

By The Associated Press
Translated by t.sato via Conyac

Text by AP