希少で高価になるフォアグラ 動物愛護だけではない理由とは

フランス・パリで売られるフォアグラ(9月5日)|OKcamera / Shutterstock.com

 フランスの年末シーズンのディナーに欠かせない食材の一つにフォアグラがあるが、今年は品薄となっている。それはなぜか?

◆動物愛護の観点から批判される生産法
 世界三大珍味の一つとして有名なフォアグラは、カモやガチョウの肝臓だ。それも、ガヴァージュ(強制給餌)を行うことで肥大させたものだ。生産数・消費数ナンバーワンのフランス以外の国でも生産されてきた。だが近年では、ヒトが動物に与える苦痛を見直す動きの高まりから、イギリス、ドイツ、ポーランド、イタリア、トルコ、インド、スウェーデン、イスラエルなど多くの国で生産が禁止された(レ・ゼコー紙)。

 イギリスでは、現国王チャールズ3世がまだ皇太子であった10年以上も前から、自身の住居でのフォアグラの消費を禁止してきた。王位に就いてからもその姿勢を崩さず、11月18日には、王室全体でフォアグラを禁止すると発言した。

◆鳥インフルエンザの影響
 フォアグラが逆境の原因はこれだけではない。フランスでは2年近く、鳥インフルエンザの流行が断続的に続いている。2021年11月終わりから今年5月初めまでに鳥インフルエンザが確認された家禽を扱う農場は1364ヶ所。流行予防のために殺処分された家禽類は合計1600万羽に上る。(フランス・アンフォ、5/2)

 家禽には鶏だけでなく、七面鳥やカモ、ガチョウも含まれる。特にこの春は、繁殖中だったカモの80%が殺処分され、フォアグラ生産にも大きな影響を及ぼしている。フランス南西部のある農場は、普段なら1200羽収容できる飼育室に11月半ば250羽しかいないと嘆く。(フランス・アンフォ、11/11)

 またフランス西部の別の農場でも、現在飼育しているカモの数は通常の8分の1に過ぎない。今年のフォアグラの生産量は全国平均で30%減少した。そのうち30年以上家業とフォアグラを生産している農場に限れば、80%もの減少だ。(フランス・アンフォ、12/3)

Text by 冠ゆき