お金で居住権 ポルトガルのゴールデンビザ、米国人が中国人抜き取得トップに
◆セーフティネット求め? アメリカ人が急増
しかし、今年はこれまでの申請合格者のうち、中国出身者はわずか16%で2014年の81%から大幅に減少している。申請者は投資や書類に加え対面での面接を受ける必要があるが、中国ではゼロコロナの厳しい渡航制限のため難しくなっており、これが中国人をゴールデンビザから遠ざけている。さらに、政治的緊張も加わり、中国人がビザを取るための障害は増えている。(ポルトガル・ニュース)
代わって増加したのがアメリカ人で、今年上半期では発給数で中国人を抜いた。ブルームバーグは、物価の高騰、政治における党派対立のムード、ドル高などが、多くのアメリカ人を移住またはもしもの時の選択肢を増やすためのセカンド・パスポート取得に向かわせていると指摘する。最近の世論調査では、回答者のほぼ半数が生活水準を向上させる見込みがないと感じており、86%がアメリカ人の価値観が大きく分かれていると考えていることがわかったという。
もっともゴールデンビザは、家族や仕事に縛られず現在の住まいを離れることができる経済的に余裕のある人だけが利用できるものだ。初期投資と頻繁な移動の費用が払える人が対象になるため、リモートワーカー、暗号資産家、定年退職者のなかで最も関心が高いが、ここ数年の社会の大きな変化のなかで、予定より早く仕事をやめて応募した人もいるという。
◆本当に必要? 悪用の危険にEUは厳しい目
人気のゴールデンビザだが、ポルトガルの英字紙ポルトガル・レジデントは、「制度はもはや意味をなさない」というイギリスのジャーナリスト、オリバー・バロー氏の意見を紹介する。同氏は、そもそもこの制度は金融危機の後に投資を集めるために導入された策で、現在では良いビジネスアイデアがあれば別の方法で投資を呼び込むことが可能だと主張。このまま続ければ資産隠しや脱税などに悪用されるだけだとしている。
実際にキプロスでは、犯罪歴のある中国人ビジネスマンにパスポート取得を持ちかけた政治家が逮捕され、2020年には投資による市民権プログラムは一時停止となっている。欧州委員会も裏口から市民権を与えるような制度だとして一部欧州連合(EU)加盟国に警告を発している。さらに制度が金持ちのロシア人に人気なことにも、ウクライナ侵攻の最中、批判が高まっている。(ブルームバーグ)
ゴールデンビザを通じたポルトガルへの投資は、今年上半期で前年同期より33%増の3億1629万ユーロ(約456億円)に達し好調だ(ニュースサイト『BOBfm』)。批判はあるものの需要があり成果を出しているだけに制度は当分続きそうだ。
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