最低賃金が低い日本、過去最大31円引き上げ 海外メディアはどう見た?

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 厚生労働省の審議会は、最低賃金を全国平均で31円引き上げて961円とする目安を示した。過去最大の引き上げ幅となっており、政府は食料品やエネルギー料金の値上がりで負担の増す家計支援のためとしている。海外からは適切な判断だと好意的な意見が出ているが、課題も指摘されている。

◆首相も期待 経済の転換点となるか?
 ロイターは、過去最大の3.3%となる最低賃金の引き上げは、岸田首相が世界的な商品インフレから家計を保護しようという取り組みにとって好ましい展開だと述べた。日本経済を持続可能な回復軌道に乗せるため、広く富を分配するという自身の主要政策をけん引するものとして、首相はこの引き上げに期待しているとしている。

 ブルームバーグも、過去最大の引き上げは生活費の増加に対応しようとする低所得世帯を後押しするものだと説明。人への投資のためにも重要で、「新しい資本主義」の時代にふさわしい引き上げ幅となるよう期待したいという木原官房副長官のコメントを紹介している。

 ウェブ誌『クオーツ』は、世界で最も裕福な国の一つである日本で長い間賃金が比較的低い状態が続いてきたとし、経済協力開発機構(OECD)加盟国38ヶ国中11番目に低い水準だと指摘する。しかし世界的なインフレによる消費者物価の押し上げで企業に賃上げ圧力がかかっており、これまで停滞してきた日本の賃金が転換期を迎えたことを示唆していると述べている。

Text by 山川 真智子