復調するジンバブエのタバコ生産 森林破壊、児童労働の懸念残る

Tsvangirayi Mukwazhi / AP Photo

 アフリカ最大の葉タバコ生産国であり、葉タバコの輸出国として世界最上位国のひとつに数えられるジンバブエ。今年も葉タバコの出荷販売を開始したジンバブエだが、各種人権団体や環境保護主義者、世界的バイヤー企業からの圧力を受けて、森林破壊防止と児童労働削減に向けた取り組みを公約した上での輸出スタートとなっている。

 アフリカ南部に位置するジンバブエ。ここでの葉タバコ生産がいま、回復基調にある。過去を振り返ると、その生産量は1998年の29万トンのピーク時から、その後の10年で6万トン未満にまで落ち込んだ。この急落の引き金となったのは、その当時の葉タバコ生産において大きな役割を担っていた数千人の白人農業経営者らから土地を没収する農地改革政策を政府が強行したことだった。

 しかし近年になって、ジンバブエの葉タバコ生産高は急速に拡大。同国はすでに、世界の葉タバコ輸出国上位5ヶ国の番付けに復帰した。同国にあるタバコ産業マーケティング委員会(Tobacco Industry Marketing Board)によると、2021 年のジンバブエの葉タバコ輸出量は22万トンをわずかに上回る水準だった。

 同国最大の販売事業者のひとつであるTSLリミテッドによると、今年は天候不順のため、約10%から15%の収穫量減少が予想されるという。

 ジンバブエにとって葉タバコは、金をはじめとする鉱業生産や、海外在住のジンバブエ人からの資金移送と並ぶ最重要の外貨獲得源だ。昨年のジンバブエの葉タバコ輸出額は約12億ドル。政府はこれをさらに「2025年までに50億ドルの輸出産業に」成長させたい意向だ。この展望は今年3月、葉タバコの輸出オークション市場が開幕した際に同国のアンシャス・ムスカ農業大臣が語ったものだ。

 ムスカ大臣によると、ジンバブエ政府はこれまで以上に農業者向けの地方予算を増額して生産を奨励し、葉タバコ生産量を年間33万トンにまで増やしたいと考えている。

 その一方で、タバコががんの原因となることは広く知られている。世界大手の葉タバコバイヤー企業側はジンバブエに対し、発がん性以外の話題で反対者に攻撃の糸口を与えぬよう、環境にダメージを与える生産方法は避け、葉タバコ生産の現場で児童労働の使用も控えるよう強く要請している。

 ジンバブエ産の葉タバコの大部分はアジア諸国に輸出されており、そのなかでも最大の輸入国は中国だ。

 ジンバブエの葉タバコ生産拡大の裏には、世界最大の紙巻タバコメーカーである中国国営企業「中国煙草総公司」が確立してきた生産者契約システムがある。このシステムでは、企業側が種子・肥料・食料の購入、さらには労賃と薪代にいたるまでの資金を農業者に貸し付ける見返りに、農業者側は自ら生産した葉タバコを中国煙草総公司またはその代理業者に販売する義務を負う。

 ジンバブエの乾燥葉タバコの大部分は、現在10万人以上を数える小規模黒人農業者の手で生産されている。その多くは、かつて白人農業経営者が独占所有していた大農場の土地の一部を農地改革の再分配によって手に入れた人々だ。タバコ産業マーケティング委員会によると、小規模農業者らの生産量は合わせて14万7000トン。これは、昨年販売された葉タバコの総量である約23万3000トンの、およそ63%に相当する。

 かつての商業的大規模農業体制が根本から覆されたことにより、労働集約的な作物生産を担う現場の農業者たちのあり方は一変した。もともと白人地主が所有していた大規模商業農場では、ひとつの農場が何十人もの常勤労働者を雇う体制で運営されていた。しかし現在では、主に家族経営からなる小農場がその生産を担っている。人権活動家らによると、それらの小農場は児童労働に依存していることが多いという。

 さらにもうひとつの問題もある。この新興の小規模葉タバコ生産農家の多くは、タバコの葉を乾燥させるのに必要な電力や石炭を買う資金の余裕がないため、付近の木々を伐採してそれを燃料にしている。結果としてジンバブエの森林は近年、毎年約15%~20%のペースで減少していると研究者らは指摘する。

 タバコ産業マーケティング委員会のCEOを務めるミーンウェル・グドゥ氏がAPに語ったところによると、ジンバブエのタバコ業界は国際的な圧力を受け、現在これらの問題の軽減に努めているという。

 同氏は「私たちの顧客である多くの優良企業の側で、『持続可能なタバコプログラム』と呼ばれる規範が策定されました。そのなかでは、森林破壊と児童労働は好ましくない慣行のリストに入っています。供給側の我々としてもこの規範を遵守する必要があります」と語る。

 グドゥ氏によると、ジンバブエでは「植林電撃戦」と呼ばれる植林政策が実施中だ。その一環として農業者らに苗木を配布し、それぞれの地元地域に新たな植林地を作るよう奨励している。

 同氏は「私たちはほかの競合生産国が実施しているのと同様に、大規模な植樹を行う計画です。たとえばブラジルに目を向けると、そこでは農業者らがもともと存在する自然の樹木ではなく、自分たちが植樹して育てた新たな植林地から薪を採取して葉タバコ乾燥の燃料にしています。ジンバブエでも、同じことをやりたいのです」と展望を述べている。

 ただし児童労働削減の取り組みの方は、それよりさらに困難な課題になるだろう。一部の農業者の間からはそうした声が聞かれる。なぜならジンバブエでは、子供が農場で働くことは何世代にもわたって多くの家庭で行われてきた一般的な習慣であり、家計を支えるために5歳の幼い子供が両親とともに畑で働く姿は、ごくありふれた子育て風景なのだという。

 人権保護団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」の2018年報告書には、「ジンバブエの葉タバコ農場の子供たちは危険な環境で働いており、そこでの業務が子供たち自身の健康と安全を損ね、教育機会の喪失をもたらす恐れがある。そこで働く児童たちは、ニコチンと有毒な農薬のリスクにさらされており、多くの児童が、葉タバコを取り扱う作業が原因でニコチン中毒と同様の症状に苦しんでいる」と記されている。

 ジンバブエの国内法では、労働が可能な法定最低年齢を16歳と定め、18歳未満の子供や若年者が「危険な仕事に従事すること」を禁止している。しかしながら、子供が葉タバコを取り扱うこと自体を禁止する法律はない。

 葉タバコ生産農家のベリントン・ムパンデ氏(37)は「私も子供の頃、トウモロコシ畑で働いていましたよ。誰でもそうでしたし、それが当たり前だったのでとくに問題は感じませんでした。ですが正直、葉タバコ農場の環境は子供には過酷すぎると思います。でも実際には、よそから人を雇う金がなく、自分の子供や幼い親戚の子に農作業を手伝わせている家族農場をいまでも目にします」と語る。

By FARAI MUTSAKA Associated Press
Translated by Conyac

Text by AP