革新的ビジネスモデルで中国発「シーイン」が台頭 終わりなきファストファッションの行方

Wirestock Creators / Shutterstock.com

◆サプライチェーンの光と影
 ファストファッション台頭の鍵となるサプライチェーン。1990年代にファストファッションのビジネスモデルを確立させたという意味で、ファストファッションブランドの第一世代であるインディテックス(ザラの親会社)は、それまで年2回新作を発表するというスケジュールで展開されていたファッション業界のカレンダーを覆し、サプライチェーンを自社で保有・管理することで、2週間に1度のペースで新作を展開してきた。2010年代の終わりに登場したファストファッション2.0は、それよりもより短いカレンダーで、市場に新商品を投入し、ウルトラ・ファストを実現させた。そして、シーインは、中国拠点というアドバンテージと消費者データを活用したさらなるサプライチェーンの改善により、3日に1度のペースで新作を展開している。約6000の中国の工場と提携し、ザラなどよりは格段に小規模の、100もしくはそれよりも少ない数での生産を実現させることで、大量の新商品をすばやく市場に投入するとともに、在庫リスクを最小化している。シーインのビジネスモデルとオペレーションは、ザラなどのファストファッションではなく、ロジスティクス管理に長けたアマゾンに近いとレスト・オブ・ワールドは分析する。

 一方、ビジネスモデルの倫理性やサステナビリティの問題については課題も少なくない。低価格と非常に短いリードタイムの実現の背景には、ソフトウェアだけでなく、工場で働く労働者の過酷で長時間の勤務がある。多くの縫製工場においては残業が常態化しているという。また、ファストファッション・イーコマースのさらなる普及に伴い、返品も増加している。2021年の米国オンラインショップの市場規模は約1兆ドルで、返品は約2200億ドルであった。消費者にとっては多くの場合、返品・返金のプロセスは容易なものだが、販売元にとっての返品プロセスは複雑だ。返金したとしても消費者に商品をキープするように依頼するほうが、効率的な場合もあるようだ。返品された商品は、多くの場合再販売されることはなく、バルクでチャリティに送られるか、卸売業者に売却される。返品や中国の工場における不合格品は、ラテンアメリカやアフリカなどに輸出されるケースもある。

 ファストファッションは引き続き大量生産・大量購入を促進し続けるのか。それともより改善されたサプライチェーンにより、人々のファッションの購入は最適化されるのだろうか。サステナビリティへの関心の高まっている一方、若者が手軽にファッションを楽しむ手段である(ウルトラ)ファストファッションの人気はしばらく衰えることはなさそうだ。

【関連記事】
ファッション業界が直面するサステナビリティ問題 変わる消費者の意識
フォーエバー 21破綻 ファストファッション業界の3つの課題
ファストファッションの「闇」暴く本が話題に 労働搾取、環境破壊の問題

Text by MAKI NAKATA