中国のゼロオミクロン戦略、世界的なサプライチェーンの混乱を呼ぶ?
◆ロックダウンが製造業直撃、輸出にも影響
ゼロコロナ政策は製造業に大きな影響をもたらしており、多国籍企業も例外ではない。デルタ株感染が広がった西安北部では、12月から3週間のロックダウンに突入。従業員が出勤できなくなったサムスンの半導体工場が操業を停止した。1400万人の全住民の検査のため当局が準封鎖を命じた天津では、トヨタとフォルクスワーゲンが工場の生産を停止している。(フォーチュン誌)
感染拡大は港湾の機能低下にもつながる。中国の感染の波は、12月の輸出にはそれほど影響はなかったようだが、年明け以降、多くの主要港でウイルス関連の混雑と遅延が拡大しているとキャピタル・エコノミクスのジュリアン・エバンス・プリッチャード氏は指摘する。ここ数日で多くの港湾都市で感染者が出ており、状況は短期的には悪化すると思われ、今月の出荷量を引き下げる可能性があるとしている。(CNN)
◆2年前の悪夢再び 中国依存の代償?
コロナ感染、旧正月、北京での冬季五輪が重なり、破滅的な事態に陥りそうだという企業幹部もいる。短期的な操業停止に対する多少の備えはあるが、数週間にわたる大規模停止となれば大混乱は必至だとしている。もっとも、冬季五輪開催のため当局は北京での感染拡大はなんとしても阻止するという見方もあり、首都に近い場所はオミクロン危機から守られるという楽観論もある。(フィナンシャル・タイムズ紙、以下FT)。
アナリストたちは、もし感染が拡大すれば製造業は2年前と同様に大打撃を受けると懸念を示している。サプライチェーンの大部分を中国外に移した企業はほとんどなく、むしろウイルスによる他国の経済活動の停止で、少なくとも短期的には多くの産業が中国への依存度を高めてしまったのが現実だという。また、生産地の分散化を図る場合でも、中国国内でのセカンドサプライヤーを作る動きのほうが盛んだということだ。(同)
台湾の調査会社トレンドフォースのアナリスト、フォレスト・チェン氏は、地理的な分散を図るには3~5年はかかるとしており(FT)、ゼロコロナ政策が続く限り、中国依存は製造業にとって大きなリスクとなりそうだ。
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