2021年マーケットを振り返る インフレ、ミーム株、エネルギー危機…

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 世界経済再開の後押しを受け消費者需要が回復し、企業利益が押し上げられたことで、2021年のウォール街は投資家に好調な一年をもたらした。

 昨年12月22日の時点でS&P500種株価指数は前年比25%上昇し、3年連続で年間の上昇となった。その間、同指数は史上最高値を67回更新した。

 同時に、市場はさまざまな困難を乗り越えてもきた。世界経済はインフレの高騰、世界規模でのサプライチェーン寸断、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる不確実性の影響を依然として受けやすく、とりわけ年末にかけて市場のボラティリティが高まった。

 年間を通じて米連邦準備制度理事会(FRB)が短期金利をほぼゼロ%に維持したことで、ウォール街の好調がもたらされた。それにより企業の借入コストは低く抑えられ、株価は高い水準が維持された。だが、投資家はFRBが今年、利上げに踏み切るとみている。

◆インフレの継続
 2021年はインフレが長い眠りから覚めた年だった。アメリカの昨年11月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比6.8%上昇し、1982年以来最も高い伸び率となった。卸売物価指数の上昇率はそれを上回る。投入コストの上昇を相殺し、一定の利益を確保するため、多くの企業が値上げしているのだ。おむつや洗剤、シリアルや家電製品など、消費者はあらゆるモノの値上がりに直面している。供給制約の解消時期は見通せないため、2022年はさらなるインフレの進行が予想される。

◆投資家が「ミーム株(はやり株)」に群がる
 昨年は小口投資家が株式投資に参入し、情報交換サイト『レディット』の掲示板フォーラム「ウォールストリートベッツ」などで、ゲームストップなど特定の銘柄に対する投資が過熱した。経営難に陥っていたビデオゲーム販売の同社の株価は1月に1600%以上も値上がりした。熱狂騒ぎで一部のヘッジファンドは巨額の損失を出したほか、数回にわたって取引が停止され、被害状況を検証する議会の公聴会が開かれた。ウェルズ・ファーゴ証券によると、10年前には家計資産に占める株式の割合が13%だったところ、昨年9月時点で25%を占めるほどになっており、小口投資家の増加が投資熱の一因とされる。

◆低利回りの債券
 昨年は債券価格が下落(利回りが上昇)したものの、経済成長が続き、インフレ率が急伸しているさなかにあって、価格下落は予想を超えるものではなかった。それでも、以前と比較すると利回りは依然低い水準にとどまっている。米10年物国債利回りを例にとると、まだ春頃の水準に届いていない。これはインフレ率がいずれ低下し、経済成長も緩やかになるという期待を反映しているといえる。債券利回りが低いことは、株価急上昇の主たる要因の一つである。つまり、債券への投資から得られる利回りがあまりにも低いため、ウォール街では株式に変わる投資先はないという考えが広まっている。

◆電池のパワー
 自動車メーカーが新型モデルを投入したこともあり、電気自動車(EV)の販売台数は全世界で約2倍に増加した。多くの消費者は化石燃料の燃焼を避けるためにEVを購入したが、快適な加速やキレのあるハンドリングに魅力を感じる人もいた。EVの世界最大手テスラの株価は、12月22日時点で前年比40%以上も値上がりしていた。ゼネラルモーターズ(GM)がEV「GMCハマー」の投入を計画するなど、既存大手もEVへの取り組みを強化した。調査会社LMCオートモーティブによると、昨年の世界新車販売台数に占めるEVの構成比は5.8%ほどだったが、2025年には15%近くにまで伸びる可能性がある。

◆半導体の調達
 世界的な半導体不足は昨年の世界経済全体に影響を及ぼし、消費者は自動車やゲーム専用機などさまざまな製品で入荷待ちの問題に直面した。半導体不足の問題は新型コロナウイルス感染症のパンデミックを契機としており、2020年初頭にアジアの半導体工場がロックダウンで閉鎖されてから継続している。今年については、半導体不足が解消されて供給過剰となった場合の価格への影響を懸念するアナリストもいる。

◆暗号が主流に
 昨年は暗号資産(仮想通貨)の価格も乱高下した。急上昇、急降下した後、年後半にかけて同じサイクルを繰り返した。2021年がそれまでの年と異なるのは、暗号資産が主流の域に入ったことで、多くの人がこうした価格変動を経験したところにある。最たる例としては、エルサルバドルが世界で初めてビットコインを法定通貨にした。金融市場で大きな影響があった話題としては、ビットコイン先物に連動する初のETF(上場投資信託)の取引がはじまったことがある。

◆中国のテック取り締まり
 中国共産党が国内のハイテク企業に対する統制を強化したことで、不安に駆られた投資家が外国証券取引所で勢いのある中国のハイテク上場企業の株式を手放し、時価総額が1兆ドル以上も減少した。販売数量で世界最大のeコマース企業アリババグループは、競争を制限した行為があったとして28億ドルの罰金を科せられた。人気のメッセージングサービス「ウィーチャット」を運営するテンセント・ホールディングスについては、楽曲の権利を持つ契約先との独占契約を解消するよう命じられた。規制当局は、中国で圧倒的な市場シェアを誇る配車サービスのディディ・グローバルによる顧客データの取り扱いを批判した。

◆市場に打って出る
 昨年は、株式市場の活況という機会を利用して新規株式公開(IPO)が急増した。ルネッサンス・キャピタルによると12月第1週までのIPO件数は389件で、一昨年の年間221件を優に超えた。なかでも注目を集めたIPOとしては、オンラインブローカーのロビンフッド、出会い系アプリのバンブル、EVメーカーのリビアン・オートモーティブなどがある。また、後に未公開企業を買収する目的で一般投資家から資金を調達するSPAC(特別買収目的会社)にとっても、大いに盛り上がった年だった。ただ、SPACは規制当局からの監視の目にさらされている。

◆エネルギー危機
 原油や天然ガスの価格が上昇し、昨年の世界経済の回復は不安定になった。最大の危機は昨冬、ヨーロッパで起きた。例年を上回る寒気で天然ガスの埋蔵量が不足するとの懸念から、12月には天然ガス価格が年初の9倍以上に高騰したのだ。アメリカの消費者が支払うガソリン代を引き下げようと、バイデン大統領はOPEC(石油輸出国機構)に原油を増産するよう圧力をかけたほか、自国の緊急備蓄原油の一部を放出すると発表した。原油やガソリンの価格は下落したものの、その主たる要因は、現下の新型コロナウイルスのパンデミックによる経済減速に対する懸念である。

◆現実とメタバース
 世界中のユーザーに関係する可能性のある実害について、数万もの不都合な内部文書をフェイスブックの内部告発者フランシス・ハウゲン氏が暴露したことで、SNSが一般市民にもたらす影響をめぐる議論が沸き起こった。そのさなか、渦中の同社はメタバース(ネット上にある3次元の仮想空間)の開発に注力するとしてメタ・プラットフォームズへと社名変更した。マーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)はメタバースについて、画面上で見るだけではなく、内部に入ることができる「仮想的な環境」と表現した。現在の株価と売上高の状況からすると、同社はこの苦境をしのいでいるといえる。

By Associated Press
Translated by Conyac

Text by AP