コーヒー豆の供給懸念強まる 都市封鎖でベトナム産の輸出停滞

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◆優等生から一転、感染拡大が輸出直撃
 昨年ベトナムは厳しいロックダウンと接触者追跡で新型コロナウイルスの蔓延を抑え、経済成長率は世界でもトップクラスとなった。しかし現在はデルタ株の感染が拡大し、ワクチン不足も伴って抑制に苦労している。2020年の全期間中には感染者は1500人未満だったが、9月5日には1日で1万3000人以上の感染が確認されている。(ガーディアン紙

 感染流行の中心地であるホーチミン市では6月に規制が導入され、8月にはさらに引き締められた。ホーチミン港の封鎖措置が強化され、中部高原の一部のコーヒー豆生産地でも規制が導入されたことから、輸出用の豆を港に運ぶのに苦労している業者がいるという(BBC)。コンテナ不足や買い付けコストの高騰も問題を複雑にしている。ベトナム・コーヒー・ココア協会の要請を受け、政府もコーヒーを含めた農産品の円滑な輸送のため、行政上のハードルを下げる指示を出した(ガーディアン紙)。

◆ブラジルも生産減、コーヒー業界にダブルショック
 ベトナムのコロナ感染の拡大を、世界のコーヒー市場の「パーフェクト・ストーム(複数の悪いことが同時発生する最悪パターン)」とアナリストたちは呼ぶが、実はコーヒー市場はすでに、世界最大の生産国で高級品種のアラビカ種を栽培するブラジルの状況に頭を悩ませていた。ブラジルでは今年の収穫分のコーヒーの開花シーズンに多くの干ばつが発生し、生産量が減っているという。また来年収穫予定のものは霜の影響を受けており、豆へのダメージが心配されている。(ガーディアン紙)

 ブルームバーグによれば、世界のコーヒー価格は南米からアジアでの供給に対する不安が高まるなか高騰している。ブラジルの霜害の後、一部の業者がベトナム産への切り替えを決定したが、価格高騰と出荷の問題により、その選択のメリットが薄れてしまった。

 気になるのは我々が飲むコーヒーの価格への影響だが、ほとんどの業者は6ヶ月契約を結んでいるため、すぐに消費者が値上がりに気づくことはないだろうと関係者は述べている。価格はブラジルの収穫結果とベトナムの感染状況に左右されるとし、次の数ヶ月が最も重要だとしている。(ガーディアン紙)

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Text by 山川 真智子