チキンサンド人気が原因? アメリカで鶏肉不足深刻

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◆原因はチキンサンド? ファストフード各社参入
 もっとも、鶏肉不足の主要な原因は、このところのチキンサンドイッチ・ブームにもあると多くのメディアが指摘している。ブルームバーグは、2019年にファストフード店、ポパイズが発売したチキンサンドが数週間で完売するほどの人気となったことで、これまでにない新たな需要が掘り起こされたと述べる。この人気で各社がチキンサンド戦争に参入。マクドナルドやKFCでも、新しいフライドチキン・サンドが予想以上の売り上げを記録しているという。結果として鶏肉不足が加速してしまった。

 WSJによれば、鶏肉供給のひっ迫を受け、KFCでは一部のチキンメニューをオンラインメニューから削除するよう各店に指示があったという。また、新製品のチキンサンドの販売を制限し、パンデミックで人気になった1バーレル30ドルのメガ盛りフライドチキンの店頭プロモーション中止も要請したということだ。KFCを所有するヤム・ブランズ社のCEOは、新しいサンドイッチの需要が非常に高く、旺盛な需要に追いつくことが自社の課題だとしている。

 胸肉だけでなく、手羽先も不足し、価格も上昇している。外食チェーンでは、パンデミックで持ち帰りやデリバリーが増えたため、包装や配送が容易な手羽先メニューを導入しており、売り上げが伸びていた。個人経営のバーやレストランでも手羽先は人気メニューだが、不足と高値で何週間も提供できない店もあるという。業界関係者は、胸肉、手羽先だけでなく、鶏肉のすべての部位において影響が見られ、全体として供給が制限されていると述べている。(WSJ)

◆増産したくても人がいない 夏を前に不安募る
 鶏肉生産会社は、需要に対応するため苦労しているが、米第2位の鶏肉加工会社であるピルグリムズ・プライド社のCEOは、人手不足が工場の生産に影響を与えているという見解を示した。従業員の給与と雇用維持のために今年は多額の出費が必要だと見ており、労働力確保は容易ではないようだ。(ブルームバーグ)

 ワシントン・ポスト紙は、パンデミック下での食肉加工工場の劣悪な労働状況と工場内の感染拡大が報じられ、食肉業界は大きな批判を浴びたが、チキンの人気は変わらないと述べる。業界関係者は、これからバーベキューシーズンの到来で需要が季節的に最も高まるため、不足はさらに深刻になるだろうと同紙に話している。

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Text by 山川 真智子