日本のレアアース戦略も参考に? 中国依存脱却に動くアメリカ

ガドリニウム|LuYago / Shutterstock.com

◆技術、環境、価格 国内回帰に課題多し
 もっとも、レアアースを採掘して電気モーターにするまでには膨大な技術と専門知識が必要で、それができるのは中国以外にほとんどないと関係者はWSJに話す。政府の継続的な支援がなければ、多くの生産者は価格面で中国に真っ向勝負を挑むこともできないとも述べている。

 CNBCは、レアアース採掘は環境負荷が高いと指摘する。レアアースの多くは、放射性物質を含む鉱床のなかに存在し、地下水面に浸出する可能性がある。また、採掘、加工、廃棄は生態系の破壊にもつながり、有害な副産物を大気中に放出する可能性もある。アメリカでは環境規制は中国よりも厳しい場合が多く、開発にはマイナスだ。

 さらに、中国をはじめとするアジアのサプライチェーンからの脱却は、電気自動車の需要が今後数年間で急速に高まると予測されていることなどから、消費者に大きな影響を与えると懸念されている。強力な国内のサプライチェーンを構築することは、市場での競争を激化させ、バッテリーの価格、コバルトやリチウムなどのコモディティのコスト上昇につながるとゴールドマン・サックスのアナリストたちは指摘している。(CNBC)

◆日本もお手本に。政府の積極関与が成功のカギ
 戦略国際問題研究所のジェーン・ナカノ氏は、アメリカがグローバルなサプライチェーンなしでレアアースの需要を満たすには、生産が大規模レベルに達し、かつ10年程度の年月をかけて抽出と生産チェーンを構築する必要があるとする。いまの段階では同盟国と協力して、中国のような支配的プレーヤーへの依存度を下げるのが最善だと述べている。(CNBC)

 ウェブ誌『クオーツ』は、日本のやり方に学ぶべきだと述べる。2010年、尖閣諸島付近で中国の漁船が日本の海上保安庁の巡視船に体当たりする事件が起きた。日本が船長を逮捕し起訴しようとしたことから、対抗措置として中国は日本にレアアースの輸出制限を行った。困った日本はリスク分散のため、独立行政法人を通じて世界各地の鉱山プロジェクトを支援する策を取り、一定量のレアアースの権利確保を実現した。

 国連のデータによれば、日本は中国からのレアアースの輸入量を10年以内に90%以上から58%に削減。2025年には50%以下にすることを目指している。レアアースの業界団体、REIAの事務局長は、日本の相対的な成功が示したのは、独自のバリューチェーンを持つためには政府の支援が必要なことだと指摘。失ってしまった産業を、市場が呼び戻すことはできないとクオーツに述べている。

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Text by 山川 真智子