ニュージーランド、19日にオーストラリアとのトラベルバブル開始 隔離なしの往来可能に

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 ニュージーランドは4月6日、オーストラリアと同様に新型コロナウイルスの感染防止に成功しているこの時期に、両国間において隔離なしでの往来を認める「トラベルバブル」を19日に開始すると発表した。

 両国間で隔離を必要としない旅行ができるようになると、新型コロナ感染症のパンデミックの影響で離れて住む家族や、苦境にあえぐ旅行会社にとっては救いとなる。

 ニュージーランドのアーダーン首相は、オーストラリアからもたらされるウイルスの感染リスクは低く、安全に旅行ができるという保健当局の見解を説明した上で、「トラベルバブルで経済が回復するほか、ウイルス感染防止策を継続しつつ外国との往来を安全に実施するという、世界でも主導的な取り組みであることが明らかになる」と述べている。

 オーストラリアはかつて、ニュージーランドからの入国に際し隔離措置を要請しなかったが、ニュージーランドは慎重なアプローチを採用しており、オーストラリアからの旅行者に対して到着時に2週間の隔離を求めていた。

 両国では、ウイルス感染が拡大している国からの旅行者に厳格な隔離措置を要求するなど、外国との間に障壁を設けることでウイルスの感染拡大を防止してきた。

 今回の発表がなされたのはニュージーランドのスキーシーズンが始まろうとしている時期でもあり、クイーンズタウンのスキーリゾートなど多くの観光地では歓迎された。

 クイーンズタウンにあるレストランCowの共同オーナーであるマル・プライス氏によると、今年の来店客数は約8割減だという。

 同氏は、「喜ばしいことだ。あのにぎわいが戻ってくる。事業者はみな、これで生きていけるという希望が持てる。これまで本当に苦しかった」と話す。

 Cowが営業を始めたのは40年以上も前で、この地では最も歴史のあるレストランのひとつである。プライス氏によれば、平日にはほとんどランチを提供せず、人員と営業時間を削ってしのいできた。

 この辺りには別荘を持つオーストラリア人が大勢いて、昨年はスキーシーズンを逃したこともあり今年は何とか訪れようとしているという。

 オーストラリアのモリソン首相は記者会見で、正常な状態に戻りつつある同国にとって、今回の決定は重要な第一歩になるとした上で、「両国がひとつになれるという事実は雇用創出や人々の再会に加え、多くの機会があることを意味している」と述べている。

 一方でアーダーン首相は、「ひとつ注意する必要がある。飛行機での旅行者は、ウイルス感染が再拡大すれば旅行が中断されてしまう可能性を踏まえた計画を立てなくてはいけない」と忠告している。

 つまり、旅行者はどちらかの国で一時的に足止めされたり、隔離措置が要請されたりすることがあり得る。

 トラベルバブル開始によりニュージーランドの隔離施設は拡充されるものの、ウイルス感染拡大に対する慎重なアプローチを継続していることもあり、オーストラリア以外の国からの往来を増やす計画はない。

 アーダーン首相は、もともと結びつきが強いクック諸島やニウエといった、太平洋の小さな島国以外とのトラベルバブルを実施することは検討していないという。

 航空会社は大幅な増便と運賃値下げを発表するなど、素早く反応した。

 ウォルマートのCEOを5年務め、パンデミックの影響が広がった昨年にニュージーランド航空のCEOに就任したグレッグ・フォラン氏は、新たな孫と会えるのを楽しみにしているという。

 同氏は、「海を越えて家族と会うためにパスポートを探すのは、この会社に来て初めてだ」と述べている。

By NICK PERRY Associated Press
Translated by Conyac

Text by AP