日欧EPA署名:安倍首相の手腕を英米紙が評価 国内改革と対米交渉を有利に

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 日本とEUの経済連携協定(EPA)が17日、締結された。これにより、農林水産品と鉱工業製品を合わせて日本側が約94%、EU側が約99%の関税を撤廃する。また、EUの企業が鉄道など日本の公共インフラ整備に参入する道も開かれる。

 欧州メディアは、これを「画期的な協定」などと一様に高い関心を持って報道。またアメリカのトランプ大統領や中国が保護貿易主義に傾いている現状から、日欧EPAが世界的な自由貿易復活の起爆剤になるという期待感も見られる。

◆双方に大きな恩恵
 日欧EPAは、4年間の協議を経て昨年末に内容がまとまった。日本の洪水被害により1週間延期して東京で開かれた日本-EUサミットの席上で、安倍首相とユンケル欧州委員会委員長、トゥスク同議長が調印式を行った。ドイツの公共放送ドイチェ・ヴェレ(DW)は、現在の欧州委員会の委任期間が終了する2019年秋の発効が有力だとしている。

 日本の主なEUへの輸出産品は、自動車、コンピューター、電気製品など。EUから日本へは、チーズ、豚肉などの加工食品や農畜産物が中心だ。例えば、日本車に対するEUの関税は現在10%だが、これらが段階的にゼロになる。また、これまで事実上不可能だった日本の公共事業への欧州企業の参入も可能となる。

 英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)は、「強固に保護された日本の農業の殻をこじ開けた」と、日本側への影響を表現。DWは、「日本のコンピューター、電機、自動車産業はいずれも協定の恩恵を受ける」と書く。欧州側では、チーズ、ワインなどの加工食品の輸出が180%伸びると見込まれているほか、豚肉、鶏肉の輸出が大きく伸びると予想される。また、EUから日本への薬品の輸出が22%増、機械製品は16%増加すると見込まれている(DW)。

Text by 内村 浩介