2018年1-3月期、M&Aが世界全体で増加 アジア太平洋は14%増予想

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 M&A管理用バーチャルデータルームソフトウェアやサービスを提供するイントラリンクスは、2018年1-3月期における、世界全体での合併・買収(M&A)ディールの公表件数が、2017年1-3月期に比べ、約2%増加するという予測を発表した。

 M&Aの環境は、グローバルな経済成長の緩やかな立ち上がり、先進国および新興国におけるインフレ率の抑制、上昇傾向の資産市場、歴史的低金利によって支えられているが、そこにはリスクが存在する。イントラリンクスでストラテジー&プロダクトマーケティング担当バイスプレジデントを務めるフィリップ・ウィチェロ氏は、次のように述べている。

「M&A活動が安定して増加するというシナリオには2つのリスクがあります。政治と金融です。経済的ナショナリズム、保護主義、世界貿易と国境を越えた経済統合への規制は、すべてディールメイクの気運に悪い影響を及ぼす可能性があります。世界の株式市場は歴史的な高値圏にあり、直近の谷から9年を経過しています。多くの人々が株式を高値で売り抜けるかもしれないことが、ディールメイキングの自信に影を落とす可能性があります」

 イントラリンクスが予測した2018年1-3月期の公表M&Aディール件数の前年比成長率によると、世界4つの地域のうち3つの地域で成長が見られる見込みだ。アジア太平洋地域(APAC)は約14%増、ヨーロッパ/中東/アフリカ(EMEA)は約6%増、中南米(LATAM)は約3%増になると予測している。北米(NA)は、2017年1-3月期に際立った成長を見せた反動から、約11%減と予測している。
 
 今後6カ月の地域別M&A活動を以下のように予測されている。

APAC:
全域で初期段階M&A活動件数が増加しており、東南アジア、インド、北アジア(中国、香港、韓国)が成長に大きく貢献するだろう。日本の初期段階M&A件数は2016年10-12月期以来の増加に転じ、2018年1年間の初期段階M&A件数は前年比6%増となるだろう。朝鮮半島とミャンマーでは政治情勢が不安定だが、APACの多くの地域では、グローバルな経済需要の伸びとそれを支える財政/金融政策が力強い経済成長をもたらし、ディールメイキングの自信を後押しするだろう。今後6カ月間APACにおけるM&A公表数の成長をリードする業種は、不動産、素材、消費者向け製品と小売業と予測されている。

EMEA:
同地域の二大M&A市場である英国とドイツが成長に貢献していないのは明らかだ。ドイツのM&A活動は2017年に減少し、最初の9カ月における公表ディール件数は前年比8%減となった。ドイツの初期段階M&A活動は2017年7-9月期前年比10%減となった。英国では、2017年7-9月期の初期段階M&A活動は前年比5%減であった。その他の東欧、中東、アフリカ、北欧、スペイン、イタリアは堅調で、初期段階M&A活動が2桁増を記録している。今後6カ月間EMEAにおけるM&A公表数の成長をリードする業種は、素材、不動産、ヘルスケアと予測されている。

LATAM:
同地域の初期段階M&A活動は2017年に四半期連続で前年比増となり、年間でも成長している。同地域の成長への回帰を確かにしたと言えるだろう。LATAMの経済活動は2017年に回復し、今後2年間も堅調と予測される。ブラジルとコロンビアにおける消費の増大、アルゼンチンの経済/金融改革、メキシコにおけるエネルギーセクターの自由化が牽引材料となっている。今後6カ月間LATAMにおけるM&A公表数の成長をリードする業種は、ヘルスケア、テクノロジー/メディア/電気通信(TMT)、金融と予測されている。

NA:
金融の状況がM&Aの助けになるものであること、ブームに沸く米国株式市場、好調な産業界、消費者の自信、こうしたすべてが現在の北米M&A市場の浮揚に寄与している。2017年の公表M&Aディール件数に顕著な増加が見られたにもかかわらず、2017年7-9月期の初期段階ディール件数は前年比7%減となった。トランプ政権が追求しているカナダとメキシコとの23年に及ぶ自由貿易協定の見直しや、米国連邦準備銀行による金利上げで資金調達コストが上昇する可能性を、米国のディールメーカーは気にしている。今後6カ月間北米のM&A公表数の成長をリードする業種は、ヘルスケア、エネルギー/電力と予測されている。

Text by 酒田 宗一