見てはならない「ウクライナ21」とは?犯行動機と真相・背景を解説

見てはならない「ウクライナ21」とは?犯行動機と真相・背景を解説

Motortion Films / Shutterstock

世界では、想像もおよばないほど凄惨な事件が起こることがある。2007年にウクライナで発生した連続惨殺事件もその一つで、一部始終を撮影した映像「ウクライナ21」が世界中で衝撃を呼んだ。

本記事では、「ウクライナ21」の殺人に至る動機や判決、事件の真相について解説する。

「ウクライナ21」は悪名高き殺人動画

「ウクライナ」21は悪名高き殺人動画

Jammy Photography / Shutterstock

「ウクライナ21」とは、世界でもっとも悪名の高い殺人動画のひとつである。内容があまりに残忍、苛酷であることから「見てはならない」「検索してはならない」とされている。生きたまま拷問され殺害される様子を映像に収めた「生きたメキシコ」と並び、その名を知られる。

本記事ではその残虐性を考慮して詳細な描写は控えるが、次の項で一連の事件の概要を述べる。

「ウクライナ21」の概要

「ウクライナ21」の概要

DedMityay / Shutterstock

2007年の6月から7月にかけて、ウクライナのドニプロペトロウシク(現 ドニプロ)という町で、合計21人もの人が3人の少年により次々と惨殺された。殺害手段はハンマーと刃物で、殺害の様子が犯人たちの手でホームビデオに収められている。

被害者のほとんどは、女性や子供、高齢者やホームレスなどの身体的・社会的弱者であったという。

ウクライナ国内ではこの事件を「ドニプロペトロウシクの狂人」と名付けて報道。映像は「3guys 1hummer」の名称で2008年にインターネット上に流出し、世界中に拡散された。被害者数が21人であることから、日本では「ウクライナ21」の名で知られている。

事件発生から逮捕までの流れ

ここでは、最初の事件から犯人が逮捕されるまでの流れを大まかに解説する。

2007年6月に最初の事件が起こる。被害者は30代の女性で、頭部をはじめ全身を殴打された遺体で発見された。数日後には、近くの公園で30代の男性が、原形をとどめないほどに殴打された遺体で発見されている。

続いての殺人で犯人は被害者の携帯電話を盗んでおり、端末内に残された映像がその後犯人を特定する手掛かりとなる。一連の犯行でほかに盗まれたものがなかったため、犯行目的は金銭ではなく快楽と考えられた。

その後の犯行は白昼など人目に付く時間帯にも及び、7月23日に逮捕されるまでの1カ月に21人もの人を惨殺している。

3人の犯人が逮捕されたもっとも大きな手がかりは、先の携帯電話を転売した際に発覚した中の映像だった。ほかにも目撃者により似顔絵が配布されるなど、時間を追うごとに捜査の手掛かりは増え、3人の少年たちを追い詰めていった。

判決

2009年3月、長い裁判の末、3人への判決が下された。判事は事件の動機について「病的なまでの自己肯定心の発露」とした。

主犯格のシュプルンヤクには、終身刑が言い渡される。一時は精神喪失を訴え無罪を主張したものの、直接殺人に手を下した罪を免れられなかった。

2人目の犯人サエンコにも、終身刑が言い渡された。

3人目のハンザだけには、懲役9年の判決が下った。彼は直接殺人に手を下しておらず、関わったのは盗難や逃走手段の手配、殺人現場での映像撮影のみであったためである。

判決の後、終身刑を言い渡された2人は控訴したというが、聞き入れられることはなかった。

「ウクライナ21」が世界に与えた影響

「ウクライナ21」の残虐な映像が世界に与えた影響は大きかった。

3人の判決を聞き、死刑でないことに疑問を持つ人も多いだろう。実はウクライナには死刑制度がなく、終身刑が極刑なのだ。しかし事件の後にウクライナ国民の半数近くが、彼らの死刑を望んだという。

また興味本位でインターネットで検索し、拡散された動画を閲覧したはいいが、あまりの凄惨さに身体や精神に不調をきたしてしまう人が多い。

「ウクライナ21」が世界に与えた影響はそれだけではない。なんと模倣犯が現れてしまった。1件目は「アカデミーマニアックス」と呼ばれる一連の事件で、ロシアで2人の未成年者がハンマーとナイフで6人を次々と殺害し、一部始終を撮影したものだ。2件目はウクライナ国内のホームレスに対する連続惨殺事件「サニテーター88」で、やはり犯行動画がインターネットで拡散された。

現在、これらの犯行映像は削除されているため、閲覧は不可能である。

「ウクライナ21」犯人たちの動機と背景

「ウクライナ21」犯人たちの動機と背景

Fer Gregory / Shutterstock

ここでは、3人の犯人が犯罪に至った動機を探っていく。3人それぞれの生い立ちと、社会的な背景からも考察する。

犯人の生い立ちと動機

まずは3人の少年たちそれぞれの生い立ちから、犯行動機や犯罪に至る心理について検証する。凶悪犯罪者の特徴として「情性欠如型」「反社会性パーソナリティ障害」の傾向があるとされるが、3人が該当するかどうかも探っていく。

イゴール・シュプルンヤク

一連の事件の主犯格。サエンコとハンザのいる学校へ転校してきたことで2人と知り合い、共謀する仲となる。

父親は有名な弁護士であり、家庭環境による犯罪誘発要因は一見なさそうである。

内気な性格の一方で、攻撃的かつ衝動的な一面もある。同時にサエンコとハンザを唆す引率力を持ち合わせていた。

一連の殺人事件以前にも、動物への惨殺行為や強盗などの犯罪歴が多かったという。情緒や性格面に犯罪を誘発する要因はあったのかもしれない。

ヴィクトル・サエンコ

父親は弁護士で、学校での成績は優秀だったが、気が弱くいじめに遭っていた。ハンザとは幼なじみである。シュプルンヤクと出会ってから成績は落ち、高校卒業後は研究員と警備員の仕事に就いていた。

シュプルンヤク同様、家庭環境に問題はないように見える。犯行動機はシュプルンヤクに唆されたためと、コンプレックスを克服するためと考えられる。

アレクサンドル・ハンザ

サエンコとは同級生で幼なじみ。父親は検察官で、学力は優秀だったが、いじめに遭っていた。シュプルンヤクと出会ってから成績は落ち、高校卒業後は職を転々とし、犯行時は無職だったという。

血液恐怖症と火傷恐怖症がコンプレックスで、連続惨殺事件では直接手を下さず撮影役だったという。

犯行動機はコンプレックス克服のためでもあるが、シュプルンヤクに唆されたときに気が弱く断れなかったことも、犯行に加わった理由かもしれない。

撮影目的と流出経路

彼らが動画を撮影した目的が何だったのかは、現在もはっきりしていない。映像が初めて公になったのは、法廷での証拠のひとつとして弁護士が提出したときであり、それ以前に映像は流出していない。そのため、彼らが売却目的で撮影したのではなさそうだ。

ほかの映像ではわざわざ被害者の葬儀に参列し、墓前で侮辱的なジェスチャーをするなどの行為も見られている。そのことからも、撮影目的があくまで快楽のためであり、販売目的ではないとの見方が強い。

映像の流出経路もいまだに明らかになっておらず、法廷以外にどのようにして流出したのか誰にもわからない。法廷関係者や傍聴人で映像を入手できそうな人もいなかったため、謎である。

社会的背景の有無

ここで3人を取り巻いていた社会環境について考察する。2007年当時のウクライナに、凶悪犯罪を生む社会的背景はあったのだろうか。

あるとすれば、2004年に新ロシア政権が大統領選で敗れ、親西欧派政権が誕生する「オレンジ革命」が起こっていること。家が裕福だったとはいえ、国を揺るがす革命的な事件が、彼らの生活に何らかの影響を及ぼしていたことは考えられる。

逆に貧しいウクライナで3人が裕福な家庭に育ったことが、いじめに遭う遠因となっている可能性もありそうだが、今となっては真相を知る由もない。

「ウクライナ21」の真相はいまだ不明な部分が多い

「ウクライナ21」の3人は、ある時点まではいわゆる「ごく普通の子ども」だった。それが何かのきっかけで、人道性を失い残虐な人格へと変貌してしまったのである。

犯行動機の詳細については、いまだに不明な部分が多い。動機が不明では防ぐ手立てがないが、今後同様の惨劇が起こらないよう祈るばかりだ。

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Text by NewSphere 編集部