台湾の映像制作チームが描く「アート+歴史」 日本統治時代の画家を辿った『タッタカの思出』公開
◆ドキュメンタリーで見せる過去と現在
你哥影視社のメンバーは、このプロジェクトを映像で表現するにあたり、張啓華ら当時の高雄在住アーティストたちが創設した「台灣南部美術協會」の現メンバーを招待することにした。1953年に創設されたその協会には、当時の張たちが描いていた作風を守り続けるアーティストたちが在籍している。組織が今も残っていることが素晴らしい反面、当時台湾を代表するプロ画家たちが集まっていた頃の興隆は薄れ、今では趣味で作品を描く地域の小さな画家たちの集団になっていた。
你哥影視社が昨年リリースした著書『タッタカ的回憶(Recalling the Memories of Tattaka)』の中で、この台灣南部美術協會メンバーを追いかけたドキュメンタリーを撮ることにした背景について、「多くのリサーチャーは、この協会の創成期が台湾美術界にいかに影響力をもたらし、素晴らしかったかという点を強調する。しかし、現在でもこの協会が当時とは違う形で生き生きと存在していること。スポットライトが当たらなくともアート史のなかでれっきとした存在感を持ってそこにいる。そのことを追う方が、美術史の世界に飛び込んで何かを想像する映像を作るより、当時の作風で絵を描き続ける彼らとの対話の方が、よほど現代的で今回のプロジェクトの文脈にあった対話ができると思った」と記している。脈々とアートの貴重な作風を保持している貴重な存在である彼らにもっと光が当たる機会を作れないか、という思いが重なった。
こうして你哥影視社は、石川が当時歩いたであろう山道を美術協会の画家たちが登り、タッタカからスケッチ作品を描く様子をドキュメンタリー映像にした。加えて、私有地の管理を担当している若者ハーレムが「セデック族」の血を引いていることがわかった你哥影視社は、ドキュメンタリーを画家たちの視点とセデック族のハーレムの2つの視点で撮影。アートと歴史に関わる関係者の、同じ場所と時間を、異なる視点から描いたドキュメンタリー作品に仕上げた。
©︎你哥影視社