台湾の映像制作チームが描く「アート+歴史」 日本統治時代の画家を辿った『タッタカの思出』公開

你哥影視社の面々:左から廖修慧さん、蘇育賢さん、田倧源さん©︎你哥影視

◆没入感を感じさせる映像とディスプレイ
 完成した映像に加え、高雄市立美術館で作品を展示する際のディスプレイについてもディレクションを任された你哥影視社は、絵画作品と映像を展示するだけでなく、実際に画家たちがタッタカでスケッチを行った時の雰囲気を伝えられるように、ベンチをはじめとした小道具を会場に持ち込んだ。高雄市立美術館の所蔵作品が壁にかけられ、今回のドキュメンタリーを通じて新たに描かれたスケッチ画はイーゼルと置かれディスプレイされた。こうすることで、展示会に訪れた人が実際に山の中を歩いているような感覚で、新旧のアート作品に触れることができるようにという意図が込められていたという。

高雄市立美術館で22年まで公開された你哥影視社のインスタレーション「タッタカの思出」©︎你哥影視社

 「今回高雄市立美術館は、私たちが手掛けた『タッタカ的回憶』プロジェクトを彼らのアーカイブとして購入してくれることが決まりました。またこの展示の後、台湾のいくつかの美術大学が私たちのアートと歴史を辿ったプロジェクトを研究し、論文を書いてくれています」と話す田さん。アートにまつわる歴史を紐解き、それを新たに一つのプロジェクトとしてアート表現を行うという你哥影視社のアプローチは、今台湾で徐々に注目を集めているというのだ。このプロジェクトをきっかけに、你哥影視社はいくつかの「アート+歴史」を追ったプロジェクトを請け負うようになったと話す。新しい歴史の解釈をアートで体感する。台湾のアーティストたちによる、歴史を踏まえた新たなアートの誕生から目が離せない。

張啓華の系譜を引き継ぐ水彩画家たちを見守るセデック族のハーレム©︎你哥影視

山頂で水彩画を描く台灣南部美術協會の面々と撮影の様子©︎你哥影視

在外ジャーナリスト協会会員 寺町幸枝取材
※本記事は在外ジャーナリスト協会の協力により作成しています。

Text by 寺町 幸枝