「引退」ではなく「進化」 セリーナ・ウィリアムズの新たな挑戦とは

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◆ウィリアムズが率いるセリーナ・ベンチャーズ
 ウィリアムズは、第二子をもうけることも含め、もっと母親としての役割を果たしていくことを、今後の一つの展望としているが、もう一つの展開として注目すべきなのがセリーナ・ベンチャーズの活動だ。セリーナ・ベンチャーズは40社ほどのエンジェル投資をしているほか、今年の3月に組成された1.11億ドル(約152億円)の第一号ファンドを通じて、フィンテックからサプライチェーンやソーシャルベンチャーまでさまざまな業種の22社に投資している。

 セリーナ・ベンチャーズの特徴は、十分に投資が行き渡っていない層にフォーカスしている点だ。ベンチャー投資のエコシステムの現状において、女性のみが立ち上げたベンチャーに投資される率は全体の2%、黒人起業家に対しては1.2%である。同社のファンド第一号は、その76%は投資が十分に行き渡っていない起業家(under-represented founders)に、その53%は女性の起業家に、47%は黒人起業家に対しての投資だ。

 セリーナ・ベンチャーズは、ウィリアムズの勝利に対するこだわりや野望を反映した会社でもある。9年前からスタートしたエンジェル投資先のポートフォリオには13のユニコーン(評価額10億ドル以上の企業)を抱えている。ウィリアムズは、彼女の最初の投資はオンライン学習の「マスタークラス(MasterClass)」だと語っており、同社もユニコーン企業の一つである。

 プロテニスにおいて、長年にわたって世界のトップを走ってきたウィリアムズ。ベンチャー投資や、この先の新たな挑戦においても、勝ち続けていくに違いない。

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Text by MAKI NAKATA