サッカー観戦が退屈に?「強い」チームがより勝ちやすく=研究 欧州8万8000試合を分析

MDI / Shutterstock.com

◆「興奮は過去のものに」
 本論文について、米科学解説誌のポピュラー・メカニクス(3月22日)は、「サッカー観戦はとても退屈に 数学が証明」との見出しで取り上げている。記事はヨーロッパのサッカー事情について、観戦が生活により浸透していると紹介している。アメリカではワールドカップなど大きなイベントでサッカーに注目が集まるのに対し、イギリスなど欧州では毎週のようにリーグ戦が行われ、クラブの順位の浮き沈みをファンが見守る。しかし同誌は「だが、2021年の末に発表された論文によると、このような興奮は過去のものとなりつつある」とも述べ、現代の試合は10年前の試合よりも結果を予想しやすくなっているとの分析結果を紹介している。

 研究ではまた、ホーム戦は有利であるとの通説も正しいことが明らかになった。しかし、その影響は近年では薄くなってきていることも同時に確認されている。米公共放送のNPR(2021年12月17日)は、「科学者たちは、時の経過とともに試合が容易に予想できるようになってきたことを突き止めた。また、ホームのアドバンテージが消え去ったということも」と伝えている。

◆サラリーキャップ制での解消に期待
 ヤセリ准教授はNPRに対し、「サッカーがエキサイティングなのは、弱いチームにもいつだって勝利するチャンスがあるからです。ですが不幸にも、競技にお金を注ぎ込み、クラブの資産と収入に制限を設けなかったことで、(この興奮を)ファンから奪ってしまった可能性があります」と語っている。

 サッカーが過度に商業化されたことで、強いクラブにはより多くの資金が押し寄せ、より有能な選手を獲得しやすくなるという循環が生まれてしまった。マサチューセッツ工科大学のアネッテ・ホソイ教授(機械工学、数学)はポピュラー・メカニクス誌に対し、NBAのようにチーム内の年棒総額に上限を設けるサラリーキャップ制により一定の歯止めがかかるのではないか、と提言している。サッカー界が商業的な成功を維持するために、新たな取り組みが求められているのかもしれない。

【関連記事】
サッカーはビジネス 欧州スーパーリーグ騒動で見えた金との関係
最高の日本人サッカー選手ランキング 1位はプレミアリーグで日本人初の快挙を達成した選手
サッカー選手への人種差別と不寛容の広まり PK失敗のイングランド代表が被害

Text by 青葉やまと