インクルージョンで注目の22年グラミー賞、現れた変化の兆し

ジョン・バティステ(中央、4月3日)|Chris Pizzello / AP Photo

◆アフリカ系アーティストの活躍
 2022年グラミー賞のアルバム・オブ・ザ・イヤーには、ジョン・バティステ(Jon Batiste)のアルバム『We Are』が選ばれ、彼はこの名誉に輝いた11番目の黒人アーティストとなった。2020年の6月中旬にリリースされたこのアルバムは、パンデミックや、バティステが積極的に参加したブラック・ライブズ・マターのプロテストといった社会情勢を反映したものとなっている。バティステは、ほかにベスト・アメリカン・ルーツ・パフォーマンス、ベスト・アメリカン・ルーツ・ソング、ベスト・スコア・サウンドトラック・フォー・ビジュアル・メディア、およびベスト・ミュージック・ビデオの4賞を受賞し、今回のグラミー賞で最も注目された音楽家の一人となった。

 また、アフリカ出身の音楽家も活躍。ベナン出身のアンジェリーク・キジョー(Angélique Kidjo)は、ベスト・グローバル・ミュージック・アルバムを受賞。また受賞は逃したものの、彼女はベスト・グローバル・ミュージック・パフォーマンスにもノミネートされた。同賞には、ナイジェリア出身のバーナ・ボーイ(Burna Boy)、フェミ・クチ(Femi Kuti)、ウィスキッド(Wizkid)、テムズ(Tems)もノミネートされた。さらに、南アフリカ出身の世界的DJブラック・コーヒー(本名:ンコシナティ・イノセント・シズウェ・マプムロ、Nkosinathi Innocent Sizwe Maphumulo)が、ダンス・エレクトリックのアルバムのカテゴリーでの賞を受賞した。

 これまでに増してインクルージョンが注目された今回のグラミー賞。表舞台に立つパフォーマー以外で音楽活動を支えるスタッフを賞賛する動きもあったようだ。また、グラミー賞の主催側も、よりダイバーシティ・インクルージョンを促進するための、インクルージョン・ライダー(Inclusion Rider)の仕組みを発表。これは過去、人種・ジェンダーなどの観点から平等に扱われず軽視されてきたグループに所属する人々の登用や採用を義務付けるガイドラインだ。こうしたインクルージョンの流れが、エンターテインメント界において今後も継続することに期待したい。

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Text by MAKI NAKATA