北京五輪の人工雪問題 選手への危険性、環境への影響

フリースタイルスキー、スノーボードなどの会場となる張家口市のスキー場(21年11月27日)|Mark Schiefelbein / AP Photo

◆もはや雪ではなく氷 選手の負傷が増加
 人工雪はよりしっかりと固まり、安定した望ましいスロープができるという利点もある。また、硬いゲレンデでは高速となり、プロスキーヤーには好まれることが多いという。しかしカナダのグローブ・アンド・メール紙によれば、人工雪でできたコースでは、高速を競う種目ではないクロスカントリーやバイアスロンなどで、骨折や内臓に穴が開くような大事故が頻発しているという。

 人工雪は凍りやすいため、より速くより危険になるという声が選手から聞かれる。また、コース外の岩や泥の多い硬い地面での転倒は、かなりのリスクとなる。雪の上というより氷の上を滑っているようで怖いし転倒の割合も増えているとノルディック・スキーの五輪金メダリストが話している(グローブ・アンド・メール紙)。

◆問題は雪だけにあらず メリットなき五輪
 人工雪への否定的な意見に対し、五輪出場歴4回のアルペンスキー選手マーティン・ベル氏は、技術革新で人工雪はより環境に優しくなったと主張。すでに冬季スポーツの一部であり、注意を払って利用すれば問題はないという意見だ。競技者としては美しいアルプスでのレースを望むが、冬季スポーツを世界に広めるためには、中国での開催は一助になると述べている。(ガーディアン紙

 ストラスクライド大学のリチャード・ハラー名誉教授は、「金、権力、影響力、政治が一体となって、雪がない地域で五輪を開催することになったのは明らか」と北京大会を批判しているが、実は誘致の際にストックホルム、オスロ、ミュンヘンの3都市が費用面と市民の支持が得られないことを理由に撤退している(ガーディアン紙)。そもそも雪のある都市が五輪開催のメリットを感じないという現実をIOCや関係者は重く受け止めるべきだろう。

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Text by 山川 真智子