ロシアのお正月の定番「オリヴィエ・サラダ」 高カロリーはソ連時代の名残

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◆共産主義で復活、食糧不足に対応
 サラダはロシア革命後に姿を消したが、1930年代にオリヴィエ氏の元弟子が自身のレストランで復活させた。彼はこのメニューを「首都(Stolichnyi)サラダ」と名付け、イデオロギー的意味でジャガイモと豆を残し、ブルジョアな食材をソーセージ、ニンジン、発酵させたキュウリに置き換えた。秘伝のソースも、ソ連産マヨネーズに変更された。改良されたサラダは1939年にソ連政府監修の料理本『おいしくて健康的な食べ物の本』で宣伝され、これをきっかけに人気となり市民権を獲得した。(同)

 オリヴィエ・サラダ普及にとくに重要だったのはソーセージとマヨネーズという2つの食材だ。ロシアのソーセージは、ソ連の人民委員がアメリカのシカゴの食肉工場を訪れた際に作り方を習得したものだ。1936年に最初のソーセージ工場がモスクワに誕生し、低脂肪、高タンパク質のソーセージ生産が始まった。この時期のソ連は集産化と不作続きの影響でひどい飢饉を経験しており、その栄養価の高さから栄養失調の患者に医師がソーセージを処方することもあったため「ドクターズ・ソーセージ」と呼ばれた。現在でも人気で、サラダ以外にもさまざまな料理に使われている。(ロシア・ビヨンド

 ガーディアン紙によれば、マヨネーズは帝政時代にロシアに紹介された。ソ連時代はコネがなければ手に入らない食品が多く、瓶入りで長持ちするマヨネーズは定番食材となった。マヨネーズは大量生産が可能で、どんな料理にも脂肪、タンパク質、刺激のある風味を吹き込み、計画経済の下で頻繁に起こる食糧不足の影響を緩和するスーパーフードだったとエコノミスト誌は解説している。また質の悪い食材を目立たせない効果もあったらしい。

◆実は不健康? 専門家が指摘
 オリヴィエ・サラダにはいまでもたっぷりのマヨネーズと根菜、そしてタンパク質の豊富な肉類や卵が使われる。メインディッシュの地位を獲得しており、厳しいロシアの冬に耐えるためのカロリー供給源でもあるという。(エコノミスト誌)

 しかし、専門家はこのサラダの材料を数年前から問題視している。マヨネーズは「カロリー爆弾」であり、オリーブオイル、卵黄、マスタードなどを使った自家製ドレッシングに置き換えるべきだと指摘。また、トランス脂肪酸が多いソーセージはチキンやターキーに変え、塩分が多く食欲が余計に増してしまうピクルスも抜くべきとしている(モスクワ・タイムズ)。かつては健康に良いとして推奨された国民的料理だが、1世紀を経たいま、時代に合わせた変化が求められている。

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Text by 山川 真智子