「4倍成長の潜在力」アフリカ映画産業についてユネスコが報告書 4つの成長モデルを提案

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◆4つの産業成長モデル
 ケニア、ルワンダ、エチオピア、セネガルは、コンテンツのデジタル化が進んでいる国の一例だ。たとえば、ケニアに関しては、インターネットの通信速度の高速化と通信料金の低下が、デジタル・プラットフォームの台頭を可能にしている。ケニアのインターネットの通信速度は、南アフリカ、モロッコに続いて3番目。1GBの通信料金は約1ドルと、アフリカにおいて通信料金が低い国の一つだ。こうした条件のもと、ケニアにおけるオンライン・ストリーミングの利用が増加し、近年では、ネットフリックスや南アフリカのショーマックス(Showmax)といったビデオ・オン・デマンド(VOD)プレーヤーが、ローカルコンテンツの配信も始めている。また、ケニアのコンテンツクリエイターにとって、SNSも妥当な収入源となりつつある。ケニアの映画産業の歴史は1930年代にさかのぼり、さまざまな外国映画のロケ地として選ばれてきた。国内の映画製作に関しては、優れたドキュメンタリー映画の存在が特徴的だ。映画産業は全国の雇用の約4.5%にあたる約13万人を創出している。

 映画産業はアフリカ各国で異なる状況にあるが、報告書では、映画およびオーディオビジュアル産業の戦略的開発・成長モデルとして4つのモデルを説明している。1つ目がノリウッド・モデル(Nollywood model)、2つ目がオートゥー・モデル(Auteur model)、3つ目がサービス・モデル(Service model)、4つ目がフェスティバル・モデル(Festival model)だ。

 ノリウッド・モデルは、米国や中国、インドのように映画製作は民間からの資金調達によって成り立っている。ノリウッド映画は低予算と短い製作期間が特徴で、場合によっては予算1万5千ドル、製作期間数週間というケースもありうる。

 オートゥー・モデルは、フランスのように国の支援を受けて行われるモデル。文化、意見、視点の多様性を推進するという意図が背景にある。このモデルは、フランスの公的資金援助の恩恵を受けてきたフランスの元植民地国、たとえばブルキナファソ、コートジボワール、セネガルなどでみられる。この製作モデルを経て作られた作品は必ずしもローカル市場向けではない。フランスなどの資金援助を受け、製作クルーは海外の映画祭に出向き、海外配給会社の獲得に注力するというのが流れだ。

 3つ目のサービス・モデルは、その名が示す通り、海外の映画製作および製作後に関わるサービスの提供にフォーカスしたもの。

 そして、4つ目のフェスティバル・モデルは、製作や人材育成といった要素ではなく、プロモーションの部分に焦点を当てていることが特徴的。代表例はブルキナファソで、首都のワガドゥーグー(Ouagadougou)で隔年開催される映画祭FESPACO(Festival panafricain du cinéma et de la télévision de Ouagadougou)の歴史は1969年の創設にさかのぼる。

 多くの国において、映画およびオーディオビジュアル産業は初期段階にあるが、今後、デジタルの活用によってより多くのクリエイターの作品が、よりスピーディーに、グローバルに展開することは間違いない。アフリカ各国の映画産業の今後の展開に期待したい。(ユネスコ報告書は、こちらよりダウンロード可能)

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Text by MAKI NAKATA