サッカーはビジネス 欧州スーパーリーグ騒動で見えた金との関係
◆オーナーもつらい……厳しい経済状況
参加を表明したクラブのオーナーの経歴を見れば、その批判もうなずけるとCNNは述べる。リバプールのオーナーは、ボストン・レッドソックスも所有する米スポーツ企業であり、アーセナルを所有するのは、NBAチームのオーナーでもあるアメリカの富豪だ。ロシアの実業家、アラブ首長国連邦の王族、中国の投資家も名を連ねている。
もっとも、クラブ経営は簡単ではない。ブルームバーグは、サッカーで成功するには資金力で競争相手を圧倒することが重要だという。しかしイタリアの名門一族アニェッリ家が所有するユベントスは、2019年の増資で調達した3億ユーロ(約390億円)に匹敵する損失をすでに計上。バルセロナもその地位を考えればもっと成功していても良さそうだが、収益は賃金の支払いに吸い取られている。コロナ禍が影響しているのは事実だが、選手の人件費が重荷になるというサッカー界の厳しい経済状況は、パンデミック前から明らかだった。
ブルームバーグは、今回の事態を受けてチャンピオンズリーグ(CL)を主催するUEFAは、ESL参加表明チームを批判したり脅したりするのではなく、選手への過剰な支出を抑制し、トップクラブがより定期的に対戦するための別の方法を模索するべきだと述べる。
◆まだまだ稼げる 米投資会社が熱視線
マンチェスター・メトロポリタン大学のポール・ウィドップ氏らが学術ニュースサイト『カンバセーション』に寄稿した記事によれば、パンデミックの影響もあって、最近になり米プライベート・エクイティ会社(投資管理会社)の資金がサッカー界に流れ込んでいる。世界的なネットワークを持つ彼らは、スポーツがエンターテインメントやデジタル分野と急速に融合しつつあることから、サッカーを大金を生むグローバル産業に変えようとしている。
動いているのはSPACと呼ばれる投資買収目的会社だ。これは既存事業の買収や投資を目的に資金調達をするために設立された会社で、投資家ができるだけ多くの利益を得ることを目的としている。彼らにとって、多くのファンを持つすでに出来上がった商品であるサッカーは魅力的だ。
サッカーは法外な放映権料の恩恵を受けてきたが、既存の放送形態が崩れつつあるいま、とくにストリーミングサービスが投資家に計り知れない富をもたらすだろうとウィドップ氏らは指摘する。ウェブ誌『クオーツ』によれば、放映権に関しDAZN(ダゾーン)がESLと交渉していたという噂もあるという。ESLの放映権は、年間収益24億ドル(約2600億円)というCLのそれを大幅に上回る可能性があったということだ。
CNNは「(サッカーは)貧乏人によって作られ、金持ちに盗まれた」という怒れるファンの言葉を紹介しているが、サッカー人気が続く限り、金の影響はますます強くなりそうだ。
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